日本の教育輸出政策のお粗末さ

このように英国政府は、教育輸出を自国の世界的な地位向上のために使っています。前述の政策文書に引用されている英高等教育政策研究所の推計によれば、世界各国の指導者のうちイギリスで教育を受けた経験がある人は50人以上いるといいます(※3)

振り返って、わが国の政府はどうでしょう。

確かに、日本式教育を海外に広めようとはしています。ただそれは、子供に学校の掃除をさせるといった、日本の学校文化的なものが中心です(※4)。それも日本式教育の一部だし、悪いことではありません。でもそこに、イギリスのような幅広い国益を考えた大所高所からの視点はあまり感じられません。

さらに岸田文雄首相は「グローバル・スタートアップ・キャンパス(GSUC)」の構想でMITを誘致し、AI研究人材の育成に取り組むと言い出しました。もともとアメリカは英国と異なり、教育輸出に熱心ではありませんでした。わざわざ海外進出しなくても、世界中から優れた人材がアメリカの大学に入学してくるからです。それを誘致するというのは寝た子を起こす政策で、AI研究で東大や東工大といった日本の大学を応援するのではなく、足を引っ張るというのはどういう考えなのでしょう。

MITのキャンパス
写真=iStock.com/gregobagel
マサチューセッツ工科大学(MIT)

※3 英高等教育政策研究所「2022 HEPIソフトパワー指数
※4 協調性を育む日本式

海外分校づくりが日本の教育再生の切り札

私はいまこそ、日本も英国のように教育輸出を本格的に考えるべきだと思っています。ニューヨークあたりに東京大学の分校を作ってはどうでしょう。東大と言えば、各種の大学ランキングで中国をはじめとするアジア諸国のトップ大学の後塵を拝していることから、「国内では超一流校だけれど世界の評価はイマイチ」との印象を持つ人も多いかもしれません(※5)。でも丁寧に見ていくと、ちょっと違う絵が浮かび上がってきます。

英クアクアレリ・シモンズが毎年発表している「QS世界大学ランキング」ではここ数年、東大の順位は23位前後で推移しています(※6)。9つある評価項目のうち、7つの項目は100点満点中80〜100点と高得点なのですが、外国人教員比率と外国人学生比率の低さが足を引っ張っているのです(※7)。つまり教員と学生の国際化が進めば相応の評価が得られるはずで、海外分校の設置はその手段の1つになり得ます。

【図表】東京大学の評価の内訳
図版=「QS世界大学ランキング」東京大学のページを編集部が加工

※5 2023年版QS世界大学ランキング 世界のトップクラスの大学として日本の大学50校が選出
※6 QS世界大学ランキング
※7 評価項目