不人気なのに大勢採用すれば質は下がる
断っておくが、これは教員を目指す学生がサボっているからではない。努力が足りないのでもない。若手の先生の志が低いという批判も当たらない。もっぱら、構造的な問題なのだ。
不人気なのに大勢採用すれば、応募採用倍率が下がって、新卒採用教員の質が下がる。
これは当たり前の原理だ。この構造を改めるには、①再び人気職種に復活させて応募者を増やすか(分母を増やす)、②もっと少ない教員で学校を回せるシステムを導入し、採用数を絞る(分子を減らす)しか方法はない。
質が下がっているという現実を認めたくない人が多いかもしれない。プライドが許さないという体制内の人もいるだろう。だったら一度、ベテランの教員に実態を聞いてみることをお勧めする。彼らは言うだろう。「若手の教員はすぐに正解を求めてくる」と。
つまり、トラブったときにどうしたらいいか、と常に正解を訊いてくる若手が多く、“彼らは答え一発で指示が欲しい”のだ。トラブル解決とは答え合わせではない。ましてやマニュアルなんて存在しない。教育とは正解不正解の次元とは異なることを知らない若手が続々と教員になっている。
新卒採用教員の学力レベルも下がっている
保護者の対応に戸惑って、教員のほうが入学式の直後に不登校になってしまったケースも聞く。ある自治体の教育長から聞いたケースは、本当に事実かと耳を疑いたくなった。こんなハナシだ。学校に登校した初日に下駄箱の汚さに呆れて帰ってしまい、あとで親からクレームの電話があったという。それが児童生徒の保護者ではなく、新採教員の親だった、というオチである。
蛇足だとは思うが、新採教員の学力レベルも下がっていることに、もう一度触れておく。
先述の通り、ある自治体では、新採教員の出身大学の偏差値が50を切っている事実を知らされた。私としても意外だった。もちろん、入学時の偏差値でひとくくりに比較するのは乱暴だし、大学で学んだ成果を評価しているわけでもない。ただし、「先生というのは、少なくとも普通以上の学力を有する人のことだ」という常識はとっくに崩れているらしい。その事実をタブー扱いにすることは、その現実を踏まえて対処する態度より、よっぽど不誠実でウソくさい!