16歳の少年だった北公次は性行為を拒絶したというが…

北の手記によれば、下宿して2日目の夜に、ジャニー喜多川が自分の布団の中に入ってきた。そして、数日後には、アイドルデビューを約束するような言葉を吐きながら、北の体をマッサージして全身にキスをし、性器を弄り始めたという。さらに北の性器をみずからの口にふくみ、「やめてください」「いやですよ」と拒絶した北を「巧みな技巧で」射精させた。本の描写はとても生々しく、そのときの性行為が詳細に記してあるが、その被害パターンは2023年5月17日に放送された『クローズアップ現代』(NHK)で紹介された比較的新しい証言とほぼ合致する。

同番組で証言した元ジャニーズJr.の二本樹顕理にほんぎ・あきまさは、1990年代、中学1年の時にジャニー喜多川からジュニアの「合宿所」(都内高級ホテル)に泊まるように言われ、そこで性被害に遭ったと語った。

「寝入る頃から(ジャニー喜多川が)ベッドの中に入って、最初は肩マッサージしたりとか体全体を触られるようになりまして、足とかもまれたりする感じですね。そこからだんだんパンツの中に手を入れられて性器を触られ、そこから性被害につながっていくようになるんです。そこからオーラルセックスされました」(『クローズアップ現代 “誰も助けてくれなかった” 告白・ジャニーズと性加害問題』より)

性経験がなかった少年たちはひどく困惑したと告白

昭和の活動初期から大企業に成長した平成まで約50年間、ジャニー喜多川はスカウトした少年たちに同じような手口で性的なことを強いてきたのではと推測できる。

二本樹はそのとき性経験がなく「すごく困惑して体が硬直した」と語った。北も「女を知る前に男と性体験してしまった」と複雑な気持ちになったという。北は「怖さといやらしさと不安と……せっかく芸能界にデビューできる近道をつかんだと思ったその恩人に今こうやっておもちゃのようにもてあそばれている」ことに言いしれぬ感情が渦巻いた。行為の翌日1万円を渡された二本樹も「お金で買い取られた。売春みたいだなと。自分の価値をお金で決められた」と感じた。被害に遭った時代は30年も違うが、13歳や16歳の少年にとって、それは生涯抱えることになる強烈なトラウマになりうる出来事だった。

2023年5月21日に、ジャニーズ事務所所属タレント最年長である少年隊の東山紀之は、出演する番組「サンデーLIVE‼」(テレビ朝日)でこう語った。

「今回の喜多川氏に対する元Jr.たちの勇気ある告白は、真摯しんしに受け止めねばなりません。実際に被害を訴えられていることは切実で、残念でなりません。未成年に与えた心の傷、人生への影響は計り知れません」〔2023年5月21日放送「サンデーLIVE‼」(テレビ朝日)より〕