「居酒屋で飲んでいるときに地元の人に聞いて知りました。でも、お金がなくたって、みんなが集まってワイワイやったら楽しいじゃないですか。やりましょうよと話したら『おまえがやれよ』(笑)。でも協賛金は30万円しか集まりません。どうしようかと思っていたら、いままでまつりをやっていた人たちが、タダで什器を出してくれたり、30数メートルの滑り台や雪像づくりに手弁当で集まってくれました」
農協青年部、商店主、役所や商工会の若手職員。鈴木はそうした人たちを動かしてまつりやイベントを企画し、町の活性化を進めていった。
20年に地方はどういう事態を迎えているだろうか。
「日本の総人口は昨年までの1年間で25万9000人も減少しました。この流れは変わらないので、少子高齢化、財政難がどの自治体にとっても深刻化するはずです。すると夕張はモデルケースになります。そのときに、どこまで行政サービスをカットできるかという後ろ向きなモデルではなく、縮小しながらも幸せに住み続けられるモデルを示さなければいけません。これにはまず、国との議論が必要ですが」
応接室での取材を終え、写真撮影のため鈴木に移動をお願いした。夕張市役所の階段は節電のためにちょっと暗くなっている。鈴木はその階段を飛ぶように駆け降りた。お金はなくても空気を変えることはできる。ほんの少し、やる気と元気があればいいのだ。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時
(的野弘路、本田 匡=撮影)