顧客が欲しているのは「問題の解決策」

米経営コンサルタントのダイアナ・キャンダーは自著『STARTUP』(新潮社)の中で「商品を作れないという理由で失敗する起業家はいない。起業家が失敗するのは商品を買ってくれる顧客がいないためだ」としたうえで、「人は製品やサービスを買うのではなく問題の解決策を買う」と強調している。以下は同書からの引用だ。

〈人はどうして店に行くのか。何らかの問題を抱えており、それをどうにかして解決したいと思っているからだ。カーペットにこびり付いている染みがどうしても取れない、自宅に子どもを置いたまま夜中に出掛けられない、退職後の蓄えが十分あるかどうか心配で仕方ない――このような問題で悩み苦しんでいる。だから問題を解決してくれる製品やサービスに対しては喜んでお金を払う。こんな人たちこそ顧客なのである〉

実際の商品を作る前にできるだけ多くの潜在顧客にインタビューし、彼らが抱えている問題を聞き出して解決策を商品化する――これがキャンダーのアドバイスだ。

そうめんとストローの意外な共通点

脱プラ運動が盛り上がるなかでビジネスモデルを刷新したシバセ工業。過去にも一度大転換を遂げている。そうめんからストローへピボットしたのである。

麦わら(Straw)のストロー
麦わら(Straw)のストロー(撮影=プレジデントオンライン編集部)

一見するとそうめんとストローには何の関係性もない。ところが、歴史をひもとくとどちらも麦畑に行き着く。前者は麦の実を原料にしている一方で、後者は明治時代にさかのぼれば麦わらで作られていたのである。ちなみに麦わらは英語で「ストロー」だ。

ストロー生産は明治時代の麦稈真田ばっかんさなだ業を起源にしている。麦稈は麦わら、真田は真田紐さなだひものことで、麦わらを真田紐のように編んでひも状にしたものが麦稈真田。もともとはヨーロッパから輸入された技術であり、麦わら帽子(ストローハット)などに利用された。

麦わら帽子に利用されている「麦稈真田」
撮影=プレジデントオンライン編集部
麦わら帽子に利用されている「麦稈真田」