少子化という大問題を解決できるのか
またしても新しい役所が誕生した。「こども家庭庁」。岸田文雄首相が、わが国の経済社会の持続性と包摂性を考える上で最重要政策だと位置付ける「次元の異なる少子化対策」を担う役所だ。担当閣僚には小倉將信・内閣府特命担当大臣が就き、発足直前には「こども・子育て政策の強化について(試案)」とする方針を示した。岸田首相は、6月に閣議決定される「骨太の方針」に、「将来の予算倍増に向けた大枠」を盛り込むとした。
今年1月の施政方針演説で岸田首相は、足下で進む少子化について、「社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況」だと危機感をあらわにした。その上で、こども・子育て政策を「待ったなしの先送りの許されない課題」だとした。確かに、2022年の出生数は80万人を割り込むなど少子化は深刻だ。昨年10月時点で7歳のこどもは100万人いるので、わずか6年で20%も減ることになる。20歳の人口は120万人だから、過去20%の減少には13年かかっていたが、その2倍以上のスピードで少子化の影響が社会を襲うことになる。「社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際」というのは決して大袈裟ではない。
そんな大問題を「こども家庭庁」は解決していけるのだろうか。
まるで厚生労働省の「子会社」
少子化問題はそもそも、ひとつの官庁の政策領域に収まらない。小倉大臣名で公表した「試案」の「基本理念」にも、①若い世代の所得を増やす、②社会全体の構造・意識を変える、③全ての子育て世帯を切れ目なく支援するとある。若い世代の所得を増やすには、当然、所得再分配を担う税制をどう変えるかが問題になるし、企業収益を増やす産業政策が重要になる。これまで厚生労働省が担ってきた労働政策や子育て支援策だけでは完結しないからこそ、新しい役所を作り、省庁横断的な機能を持たせようと考えたのだろう。
首相が「最重要政策」だと言うならば、新しい役所は、他の既存官庁よりも強い権限を持つスーパー官庁であるべきだろう。設置法上では内閣府の外局として設置されているのだが、どうも政策の中味を見ていると、厚生労働省の子会社がひとつできたような感じさえ受ける。
これまで内閣府が所管してきた「認定こども園」や「少子化対策」「児童手当」「子供の貧困対策」などがこども家庭庁に移管されたほか、厚生労働省からも「保育所」や「虐待防止」「母子保健」「ひとり親支援」などが移された。ところが、文部科学省が所管する「幼稚園」については、いじめ防止などでは連携するとしているものの、所管は移さない。