メスの欲求に応えられないオスなんて用無し

オスがその群れを守っている反面、やはりライオンにおいても、交尾の主導権はメスが掌握している。メスが誘えばオスは絶対に断れない。

田島木綿子『クジラの歌を聴け』(山と溪谷社)
田島木綿子『クジラの歌を聴け』(山と溪谷社)

ライオンの交尾は数秒で終わるが、陰茎のトゲはメスの膣を傷つけることもあるので、陰茎を引き抜くときに、メスはその痛みのために甲高い鳴き声をあげることもある。加えて交尾中、オスはメスの首筋を噛んで抑え込むことも多く、メスにとってはただただつらい行為のようにも見える。それでも、交尾を終えると、メスは再び同じオスまたは別のオスと交尾を繰り返し、妊娠を確実なものとする。

メスはメス同士で子育てをするために同時期に出産する場合が多い。ということは、子どもの自立時期も重なる。育児中は決して発情しないメスだが、子どもたちが自立すると、ほぼ同じ時期に発情を開始する。発情したメスたちは、オスの顔にお尻を近づけてニオイを嗅がせて交尾に誘う。

出典=『クジラの歌を聴け』、イラスト=芦野公平
イラスト=芦野公平
出典=『クジラの歌を聴け』より

オスは1回20秒前後の交尾を1日50回、1週間も続ける

自然界ではメスの気を惹くために死闘を繰り返したり、牙を伸ばして自分の寿命を縮めたりするオスも存在するのに、ライオンのオスの待遇はとても恵まれている。しかし、オスライオンの悦楽の日々は、メスたちの果てしない要求により試練に変わっていく。

1回の交尾は20秒前後なのだが、それを15分に1回、ときには5分に1回のハイペースで繰り返し、1日50回以上の試練(交尾)をこなすこともある。長いときにはそれが1週間ほど続き、その間、オスは寝食をする間もない。

マサイマラ、ケニア、アフリカの草原でライオンを交配
写真=iStock.com/dickysingh
※写真はイメージです

さらに、オスはメスの誘いに応じられなければ、群れから追い出されてしまう。メスが自分の獲ってきたエサを優先してオスに食べさせるのは、じつは「尽くしている」からではなく、交尾をして子どもをつくり、生まれた子どもを守ってもらうためなのである。子づくりや子育てに役立たないオスは、結果的に群れにも不要となる。

交尾中に排卵を促されるということは、ネコ科などのメスには発情期と呼ばれるものは明確に存在しないのかもしれない。それでも、特定の季節になると、野良ネコたちがにゃーにゃーと独特の声を出すのが聞こえる。ということは、ある程度子育てに適した季節を見越して、メスのほうでもオスをその気にさせる戦略は取っているのだろう。

【関連記事】
中2で「初めてのセックスはどんな状況か」を考えさせる…日本と全然違うカナダの性教育
6時間睡眠を2週間続けると集中力は酩酊状態レベルに…「電車で居眠りをする人は危険」といえる理由
これだけは絶対にやってはいけない…稲盛和夫氏が断言した「成功しない人」に共通するたった1つのこと
銀座ママが「LINEを交換しよう」と聞かれたときに必ず使う"スマートな断り文句"
「祖父母は孫に高いランドセルを買い与えてはいけない」中高年の"見栄支出"が本人と子孫を滅ぼす