消費者の「売り方」を大きく変化させた
売りたい人と買いたい人が出会う場を作り、売れた後のお金の使い方を広げていくメルカリは、さらなる成長を遂げている。2013年のサービス開始以来、10周年を迎えたが、累計の利用者数は2022年11月時点で約4800万人、出品数はじつに30億品を突破した。2022年には月間アクティブユーザー(MAU)、売上ともに過去最高を記録して絶好調だ。
消費者同士を出会わせる従来のサービスに加えて、個人も企業も手軽にネットショップを開ける「メルカリShops」、メルカリでモノを売って得たお金を利用する電子決済サービス「メルペイ」、メルカリ利用者にお得なクレジットカード「メルカード」、さらにはメルカリを通じたビットコイン取引サービスなど、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」という新ミッションを掲げてビジネスを拡大させている。
「いつでも、どこでも、すぐに売り買いできる」メルカリは、その登場の以前・以後で、消費者の「売り方」を大きく変化させた。メルカリ以前は、「売る」といったら中古品専門店に持ち込むのが当たり前だった。専門店に買い取ってもらう形で、格安で買い叩かれたとしても我慢するしかなかった。
「試し買い」や「衝動買い」を加速させる
しかし、メルカリ以後では、一般の消費者が全国の同じ消費者に対して、自由に、簡単に売れるようになった。売る側が「この金額で売りたい」と思えば、その額で買いたい人を待って、納得した金額で売れるのが新しい当たり前になっている。「海外から安く仕入れて日本で高く売る」や「限定品を買って転売する」を副業感覚で行う人も増え、その度が過ぎて問題視される場面が頻出するほどに、「売る」の価値観が更新された。
じつはメルカリは「売り方」だけでなく、「買い方」にも大きな変化をもたらしている。メルカリが当たり前の社会では、「買ってみて、もし自分に合わなくても、すぐに飽きてしまっても、そのときは売ればいい」と割り切れるため、試し買いや衝動買いが加速するのだ。「いつでも売れる」という保険に安心して買う消費者や、「あとで売る」を前提にして買ってみる消費者が増加している。この変化は、新商品が出てきても慎重になりすぎてなかなか手を出さない、という「日本の消費者の買い方」の特徴を変えていく、大きなインパクトをもたらすものだ。