ブラックレンジャーを演じたウォルター・エマニュエル・ジョーンズ氏は、最後までメンバーに残ったものの、不満を訴えたキャストのひとりだ。週に6日、1日12~15時間働き、それでも放送後しばらくは収入が少なかった。愛犬と身を寄せ合ってジープで寝泊まりをする日々が続いたという。

2014年、オンラインメディアのハフポスト・イギリス版に対し、「あまり多くはもらえませんでした。シーズン1に関しては、マクドナルドのカウンターで働いていたとしても、おそらく同じ額を稼げたでしょう」と内情を明かしている。

「スタントで何度も死にかけた」

アメリカ版でも一定のアクションが求められたが、健康保険なしに危険なスタントを課せられたことも問題となった。

現在は改善されているが、アメリカ版初代ピンク役のジョンソン氏はバラエティ誌への寄稿を通じ、「(俳優)組合のないTVシリーズで、給料は雀の涙にもかかわらず、低予算のスタントのせいで何度か死にそうになりました」とチクリと皮肉を向けている。

ただ、これには続きがあり、「(抜擢に)一生感謝します。本当に」とも彼女は述べている。その後女優として華々しい成功を収めるきっかけを切り開いただけでなく、当時は知らなかったが多くの女の子のファンも生んでいたことを誇りに思っているという。

「ピンクレンジャーとして過ごした時間は……数え切れないほどの小さな女の子たちを刺激し、男の子たちと同じくらいやんちゃになれるのだと、自信を持たせることができました。それ自体がプライスレスなことです」

パワーレンジャーの功罪という意味では、もうひとつ、人種問題との関わりがある。ガーディアン紙は、シリーズが伝統的にブラック役に黒人俳優、イエロー役にアジア系を起用していることに批判もあると指摘する。

一方、主に白人のみがヒーローを演じていた伝統を覆したとの評価もあるようだ。初代ブルーのヨスト氏は、同紙に対し、異なる人種のヒーローたちが結束して悪に立ち向かうスタイルは、その後のキッズ番組の先を行っていたと評価する。

初代レッド役は首都ワシントンの救急救命士になった

戦隊シリーズはまた、人命救助にあたる職業の尊さを多くの視聴者に伝えたのかもしれない。ヒーローたちの導き役「ゾードン」を演じたデイビット・フィールディング氏は、ガーディアン紙に対し、「救急救命士や消防士など、一般市民の命を救う職業」を目指すよう、将来の職業への意識を新たにした視聴者も多かったのではないか――と私見を語っている。