全ての関節が動くなんて…おもちゃのクオリティーに驚いた
アメリカ版は、日本版の特撮パートを流用したことで、バンダイが手掛けたおもちゃをほぼそのまま販売することが可能となった。そのおもちゃ自体も、アメリカ人を驚かせた。
理由は品質の高さだ。バンダイアメリカの元マーケティング責任者であるトリシュ・スチュワート氏は、Netflix番組の中で、各レンジャーのフィギュアに触れている。
彼女は「おもちゃの素晴らしいクオリティーに、本当に驚きました」と語る。「ただただ美しかったんです。当時の(アメリカの)アクションフィギュアよりも大きく、関節のすべてが可動しますし、それは立派な造りでした」
のちに発売されることになった合体ロボットについても、「びっくりするようなものでした」と完成度を高く評価している。合金ダイカスト製の高品質で複雑な構造のおもちゃは、アメリカのおもちゃファンたちを虜にした。
パワーレンジャーのフィギュアはアメリカで売れに売れた。ガーディアン紙は、「視聴率はうなぎ上りで、おもちゃの売り上げも瞬く間に予想を超えた」と振り返る。
バンダイアメリカのスチュワート氏はNetflixに対し、90年代全体を通じて考えても、おもちゃとして最大規模の生産量だったと語っている。当時、従業員30人未満だったバンダイアメリカを、一大企業へと押し上げた。
氏によると全米のオモチャ店で売り切れが続出し、毎日400件を超える苦情が殺到したという。特に93~94年の変身フィギュアは大ヒットし、クリスマスシーズンに向けて11の工場を新設したのに生産が追いつかないほどだったようだ。
人気ヒーローが漏らした撮影の裏側
シリーズは、レンジャー役のアメリカの俳優たちを、スターダムへと押し上げた。ガーディアン紙は、ブルー役を演じたデイヴィッド・ヨスト氏の、抜擢前までの生活を取り上げている。
ヨスト氏自身の発言によれば、氏はロサンゼルスの「家具もないマンションの一室に暮らし、床で眠り、TVは使い古しの段ボール箱の上に置いていました」との倹約生活だったという。
幸いなことに、ヒーロースーツに身を包んで戦う日々が始まると、この生活は3カ月で終わりを告げた。同紙の取材に応じたヨスト氏は、「40話を撮影し、ひとたび放送が始まると、説明もつかないことになったんです」と笑顔を浮かべる。
一方で、人気に見合った賃金を得ていないと不満を漏らすメンバーもいた。アメリカ版において賃金での争いがあったことは有名だ。米CBSの情報番組「エンターテイメント・トゥナイト」は2015年、最終的に金額で折り合いのつかなかったレッドを含むメンバー3人が、早くもシーズン2で降板していたと振り返っている。