家族しか頼れない社会は地獄である

アメリカの社会学者タルコット・パーソンズによれば、「家族は子どもの養育とメンバーの精神的安定という2つを本質的機能とする親族集団であり、必ずしも共住を前提としない」と規定されています。

さしずめ、現代においては、必ずしも「子どもの養育」が必須条件とはならないし、血縁関係に限定されるものでもないため、「家族とは、必ずしも血縁や共住を前提とせず、構成するメンバーの経済的生活の成立と精神的安定を機能とする集団」と、新しく定義を拡張することも可能です。

荒川和久『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)
荒川和久『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)

血縁や共住を前提としない……つまり、血のつながりや同居することだけが家族ではないのだ。ここにこそ、家族を消滅させないひとつのヒントが隠されているように思います。

場所としての家が家族なのではなく、血のつながりが家族なのでもなく、いつも一緒に同じメンバーで同じ場所にいることだけに依存するのではなく、必要に応じて、集まったり助け合ったりする関係性、何かをするために考え方や価値観を同じくする者同士が巡り合える「出場所」を用意しておく。そういう視点も必要ではないでしょうか。

そんな「接続する家族」という新たなコミュニティの視点が、今後は求められます。家族が家族しか頼れない社会はむしろ地獄なのです。

【関連記事】
「若者の恋愛離れ、セックス離れ」はウソである…「20代の4割がデート経験なし」の本当の意味
子なし女性の幸福度は上がっているのに…「子を持つ女性のほうが幸福度が低い」少子化が加速する当然の理由
妻がうつ病に…「なぜ」という夫に精神科医が「原因を探るのはやめたほうがいい」と諭すワケ
子どもに月経や射精について話すときに「絶対使ってはいけない言葉」2つ【2021上半期BEST5】
男性の2人に1人は子を持たずに生涯を終える…岸田首相は「まもなく日本を襲う過酷な現実」が見えていない