メタボを嘆くより、長生きできると喜ぶべき理由
「腹九分目」などというと、「メタボが心配」という人もいらっしゃるでしょう。しかし、本当は、少しくらい「太め」なほうが、健康に長生きできます。
それは、世界中のさまざまな調査から、明らかになっていることです。「やや太り気味」(BMIが25をすこし超えたあたり)の人が、最も健康であることは、疫学的にはっきりしているのです。
たとえば、アメリカで、29年間にわたって行われた国民健康栄養調査によると、最も長生きするのは、BMI25~29.9の「小太り型」。一方、18.5未満の「やせ型」の死亡率は、その2.5倍も高かったのです。
日本でも、かつて宮城県で行われた5万人対象の大規模調査の結果、「やせ型の人は、やや太めの人よりも、6~8年も寿命が短い」ことがわかっています。なお、BMIは、体重(kg)を身長(m)で2回割った数値で、18.5~25未満が「普通」、25を超えると「メタボ」とされます。
というわけで、少し太ったときは、「メタボになった」と嘆くのではなく、むしろ「健康になった」「これで長生きできる」と喜んだほうがいいのです。
摂取カロリー量を減らすと、確実に体と脳の老化を早める
それなのに、厚生労働省は、2008年4月から、メタボかどうかをチェックする「特定健康診査」を国民に義務付けています。メタボになると、高血圧、糖尿病、高脂血症などになりやすいという理由から、メタボ対策を進めてきたのです。
対策の大きな柱は「食生活の見直し」です。端的にいうと、それは摂取するカロリー量を減らすことであり、「愚策」と呼ぶしかない政策です。
食生活を下手に見直し、摂取カロリー量を減らすと、確実に体と脳(心)の老化を早めます。カロリー量を減らすと、おおむねそれに比例して、摂取タンパク質の量も少なくなるので、筋肉量が減り、老化が急激に進むのです。
そもそも、人間が中年以降、太るのは当たり前のことです。たとえば、男性の場合は、その主な原因は男性ホルモンが減ることです。
テストステロンなどの男性ホルモンには、筋肉量を増やし、内臓の脂肪蓄積をおさえる働きがあります。そのホルモンが減少すれば、腹周りに多少脂肪がつくのも、人体の必然なのです。
だから、高齢になってからは、多少体重が増えたからといって、ダイエットや節食はNGです。高齢者の場合、食事量を減らして、低栄養になるほうがよほど危険なのです。