倫也が最もハマる役柄

③ゆるふわ自由人 世間体より感性で生きる

奇天烈な倫也もいいが、最もしっくりハマるのは、ふわっとゆるっと生きる自由人や遊び人役だ。むしろこっちのほうの役が数としては多い。

脚光を浴びた朝ドラ「半分、青い。」(2018年)の朝井正人役の記憶も新しい。

女をとっかえひっかえの遊び人・マアくんは、佐藤健が演じた律、間宮祥太朗が演じた涼ちゃんとともに、女性が注目したキャラクターだった。マアくんを演じた後は、主演作も増えた。時代が倫也に追いついた、そんな印象もある。

そういえば、倫也が所属する事務所・トップコートの社長、渡邊万由美が「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演(2019年)。密着取材を受けていたとき、なかなか売れなかった倫也を励まし続けたというエピソードがあった。

同じ事務所の松坂桃李や菅田将暉が売れっ子人気俳優になっていく中、焦りも大きかったという。

ここ10年の俳優に共通する特徴

ふと、この約10年を振り返ってみると、一気にブレイクした印象のある俳優は、

綾野剛(「カーネーション」2012年・NHK)
斎藤工(「昼顔」2014年・フジ)
西島秀俊(「ダブルフェイス」2012年、「MOZU」2014年、TBS&WOWOW)
菅田将暉・高橋一生(「民王」2015年・テレ朝)
町田啓太(「美女と男子」2015年・NHK)
田中圭(「おっさんずラブ」2016・2018年、テレ朝)

キャリアはそれなりに長く、売れっ子になるまでに時間がかかったのは倫也も同じだ。

倫也の系統は上記の俳優陣とは異なるが、ジェンダーレスにSDGs、配慮の時代でもある令和にブレイクしたのは、非常に納得がいく。

実は、かなり前だが「ハリ系」という主演作がある(2007年)。

ハリネズミが進化した人間だからハリ系。驚いたり、感情の発露があると、ハリが出ちゃうし、命の危険を感じると自己防衛で丸くなってしまう。要は、臆病で自分に自信がない男子の役だ。

サル系女子(村川絵梨)に恋をするも、自分のハリで傷つけてしまうことを恐れ、なかなか前に進めない。物語の終盤では、ヤマアラシ由来のウイルス感染が広まり、ハリ系の人間が迫害され始める。時代を先取りする内容だったと思うし、ビビリで気弱で心優しいハリ系男子は、今の倫也の土台になったとも言える。