意外にも胸糞悪いキャラクターが光る

②狂気の人 サイコパスからストーカーまで

柔和な微笑みを湛えながら凶行におよぶサイコパスに、ちょいクズ風味のストーカーまで、アングラ倫也も見逃せない。

最も鳥肌モノだったのは、「闇金ウシジマくんSeason3」(2016年・MBS)の神堂大道役だ。ヒロイン(光宗薫)の一家をまるっと支配し、乗っ取る手口が凄かった。家族全員の弱みを握り、信頼を得てからは暴力で支配。「え、あの子犬顔で?」と思うかもしれないが、逆に子犬顔だからこそ非情な振る舞いと胸糞悪さがより強調されて見える。

最後は主人公のウシジマくん(山田孝之)が成敗してくれるのだが、ボッコボコにされて警察に逮捕された倫也にちょっと胸がすいた。倫也が悪役の務めをきっちりはたした作品だった。

また悲しきストーカーというか、固執と支配の裏側に一抹の寂しさを匂わせたのが「ホリデイラブ」(2018年・テレ朝)だ。

倫也が演じた夫はとんでもないモラハラ男。妻(松本まりか)は浮気して狂気の沙汰へと突っ走るのだが、倫也は妻の浮気相手の夫婦(仲里依紗・塚本高史)に憎悪を向ける。

笑顔を一切封印した役だったが、最終回では妻への感謝の意も表し、妻が凶行に及んだのは自分の責任だと認めた。妻は衝撃の結末を迎えたが、夫には人として改善の余地と希望があった。

鼻もちならないエリート臭を漂わせることもできれば、マウンティング男子も得意中の得意。

「100万円の女たち」(2017年・テレ東)では、父親が死刑囚の主人公(野田洋次郎)に、嫉妬&マウントしまくるイケメン人気作家・花木ゆずを演じた。コム・デ・ギャルソンとか着て、オシャレなわけさ。いかにも人気商売にあぐらかいてる感じでね。

でも、野田と同居する女たちから小馬鹿にされる小気味よさ。このドラマは予測不能かつ衝撃の展開があって、“感じ悪い”倫也はもちろんのこと、5人の女たちの来し方行く末には相当痺れるので、おすすめしたい。

まさにカメレオン俳優

ちなみに、倫也は制作陣から絶大な信頼をされているんだなとも思う。ひとつの作品の中で異なる顔を見せる役が意外と多いからだ。

倫也の「ストーカーバージョン」と「いい人バージョン」を1作品で味わえるのが「伊藤くんAtoE」(2017年・MBS・TBS)だ。

とてもトリッキーな設定で、倫也は2役。主人公の脚本家(木村文乃)の脳内シーンでは、クズでストーカーのボンボン・伊藤くんを、現実では文乃の後輩脚本家・久住健太郎を演じている。

また、「珈琲いかがでしょう」(2021年・テレ東)では、前半では穏やかで紳士的な癒し系移動珈琲店の店主なのだが、その過去は触るもの皆傷つける勢いの一匹狼的なヤクザだ。

さらに、まったく異なる倫也をさらに多く観たい人には、映画「水曜日が消えた」(2020年)を。曜日で人格が入れ替わる、つまり7人の人格を演じているのだ。几帳面な倫也、やさぐれた倫也などをいっぺんに堪能できる。