「やるやる詐欺」は周囲からの信頼を失う

逆に、「あとで」「今度」が口癖になっている人は、仕事だけでなくプライベートでも先延ばしの常習犯というケースが少なくないでしょう。こうした人に共通する常套句が、「やらないとは言っていない」です。

「今すぐはやらないけれど、あとでならやる」というわけです。でもそういう人に限って、「あと」になってもやはり面倒になって、さらに「またあとで」と再び先延ばしにしてしまいがちです。こうしたことを続けていると、いずれ「やるやる詐欺」などと揶揄やゆされ、周囲からアテにされなくなってしまうでしょう。

私自身の話で恐縮ですが、『クラブ由美』を始めて40年、当初から欠かさずに続けてきたことがあります。それは毎朝起きてから、前日お見えになられたお客さまに「手紙」を書くことです。ご来店のお礼とその日の話題や会話の内容に関するひと言を添えて。もちろん自筆です。多いときは1日に10通以上書くことも。

この手紙は私にとって、お客さまへの大切なおもてなしのひとつです。正直言って、毎日深夜に帰宅して、翌朝早く起きて手紙を書くのはかなりハードです。でも、お会いした日から時間をおかずに書いてお送りするからこそ、おもてなしになるのです。

それにその日のうちに書いておかないと、明日にはまた新しいお客さまがお見えになります。今日書けば4枚で済むのが、明日になったら8枚書かなければならなくなる。これでは数日でパンクしてしまいます。だから絶対に「明日にしよう」にしないのです。それは、お客さまへのおもてなしであると同時に、私自身のためでもあるのです。

「明日やろう」は時間負債を増やしてしまうだけ

今日やるべきことを明日に先延ばしするのは、クレジットで明日の時間を前借りしているようなもの。つまり“時間負債”を抱えることになるわけです。当然、その負債は明日には返済しなければなりません。でもその明日に優先すべき大事な用事があったら、また先延ばしして時間を借りなければならなくなります。

コワーキングスペースで一息つくアジア人ビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
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こんなことを繰り返していると時間負債が雪だるまのように膨れてしまい、いざ本当に大事な用事があったとき、それに費やす時間が足りなくなる事態にもなりかねません。間違いなくきっちり返してくれる人はお金を借りられるけれど、ああだこうだ言ってなかなか返してくれない人には誰もお金を貸してくれません。それと同じこと。

「あとでやっておくよ」は、きちんと優先順位を考えた上で、本当にあとで処理するという実績を重ねてきたことで得られる“社会的信用”です。ただ面倒でズルズルと先延ばしばかりしている人がこんなことを言っても、誰も信用してくれないでしょう。昔から「今度とオバケは出たためしがない」と言います。やるならすぐやる。やらないなら「あとでやる」などと言わない。それが人に信用される誠意というものなのです。