レジャー業界にビジネスチャンスあり

人生後半戦をより楽しむために、レジャー環境の整備が社会的に必要だ。

たとえばウィンタースポーツ。北米にはスキー場が2000あるが、相次ぐ買収によってそれらがおよそ2つのグループに分かれている。どちらかの運営会社の年間スキーパス(約1000ドル)を購入すれば、その会社のスキー場ならどこでも楽しめる。また、ホテルはスキー場ではなく麓に集約されていて、夜は街に繰り出して夜遊びもできる。スイスのサンモリッツなどは、パリの高級ブランド店やホテル、グルメ食堂などが一堂に集まり、日本の大学スキー部の合宿所みたいな、みすぼらしい雰囲気はまったくない。

それに対して、日本はコンセプトも経営もばらばらだ。たとえば同じ長野県北部でも、野沢温泉と志賀高原のスキー場は連携がない。志賀高原にいたってはエリア別にリフトのオーナーが違うため、同じ志賀高原なのに券がそれぞれで必要だ。そして旅館やペンションはスキー場の中にあり、麓の駅前には何もないので、スキーの後は宿の中で過ごすほかない。

日本も世界のスキー場の常識に合わせるべきだ。たとえば、県にスキー公社をつくってひとつにまとめれば経営を効率化でき、ユーザーの利便性も高まる。駅前も、昼夜なく楽しめるように再開発したほうがいい。もともと雪質のいいスキー場は多いのだから、世界標準で整備すれば、ニセコや最近の白馬のように、もっと人が集まる。日本では個別には赤字であったゴルフ場が100カ所以上集約されて、東証1部に上場したPGMのような企業ができた。スキー場でも同じことができるのでビジネスチャンスであるが、個別のオーナーはなかなかそういう発想をしない。

老後を楽しみたいという人口が増え、かつ彼らが多額の貯金を握っているのだから、レジャー業界のビジネスチャンスは数少ない“成長産業”だ。起業家には大いに挑戦のしがいがあるので、頑張ってもらいたい。

(構成=村上 敬)
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