友達の少ない人も悲惨だ。現役時代を「会社人間」で過ごしてきた人は、定年後も会社の交友関係にしがみつく。OBの同好会がある大企業もある。会社を辞めた後も同じメンバーで囲碁を打ち、毎回同じ昔話をする人生は寂しい。

ゴルフをやれば、新たな知り合いができないでもない。ゴルフ場の会員になって1人でいけば、ゴルフ場が他の人と一緒の組で回るようアレンジしてくれる。同じように寂しい人が来るから、メンツもだいたい同じで、そのうち「やあ、こんにちは」という程度の仲にはなる。

しかし、たいていはそのうち足が遠のく。いくらゴルフが好きでも、頻繁に同じメンバーで回っていたら飽きてしまう。現役時代にゴルフが楽しみだったのは、月に数回コースに出る程度だったから。制約なく同じことを同じ顔ぶれで繰り返せば、そのうち刺激がなくなってくるのは当然である。

釣りも同様だ。ある経営者はサラリーマン時代から釣りが好きで、「リタイアしたら瀬戸内海の漁村に移り住み、好きなだけ釣りをする」と言っていた。実際、1度は夢をかなえたという。しかし、数カ月で戻ってきた。最初は奥さんも喜んで釣果を食べてくれた。しかし毎日では不満が募る。近所はみんな漁師だから、もらってくれる人もいない。釣っても誰にも喜ばれず、はりあいがなくなったというわけだ。

ならば他の趣味でもと考えても、スキルの壁が立ちはだかる。若いときならすぐ覚えられたスキルも、高齢者になると習得に時間がかかる。上達が実感できないものはつまらないし、アウトドア系の趣味はスキルが未熟だと大けがにつながるおそれがある。

今は仕事に邁進して、定年後に好きなことを思う存分やろうと考える人は多い。たしかにリタイアすれば時間は腐るほどできる。しかし体力、友達、スキルがないまま老後に突入すると、期待していたように趣味を楽しめない。人生の後半戦をいきいき暮らせるかどうかは、現役時代の過ごし方にかかっている。

「そのうちやろう」と言い訳してはいけない

老後を楽しむには、今すぐに趣味を充実させたほうがいい。私が学長を務めるBBTに「50代からの選択」という人気授業がある。最初の授業では、まず縦軸に「室内」「室外」、横軸に「1人」「集団」を置いて4つの象限をつくり、それぞれにやりたい趣味を書いてもらう。すると、たいていの人は合計3〜4個で終わってしまう。

ゴルフや釣りの例をあげたが、いくら好きなものでも毎日のように繰り返せばいずれ飽きてくる。3〜4個ではすぐ時間を持て余すことになるだろう。

理想は4つの象限にそれぞれ5個ずつ、計20個の趣味を持つことである。バランスよく趣味を持てば、春夏秋冬、雨の日も晴れた日も、孤独にならずに老後を楽しめる。

やりたい趣味を20個書き出そう​