「コロナで婚姻が減った」報道のウソ

日本も対岸の火事ではありません。

内閣府が全国の13歳~29歳男女を対象として実施した令和元年「子供・若者の意識に関する調査」において、「自分が40歳になったとき」に「結婚している」と回答したのは58%、「出世している」は38%、「お金持ちになっている」は35%に過ぎません。「分不相応な望みなど持つまい。頑張ったところで、どうせ無理だし、無駄なことはしても仕方ないから」と若者に思わせてしまう社会というのはやはり何かおかしいのではないでしょうか。

コロナ禍の3年間、若者は、外出も友達との交流も制限され、大学生はキャンパスにすら行くことを禁止されました。新たな人との出会いとなる飲食業などのバイト機会も奪われ、それは、交友機会や恋愛機会を喪失したようなものです。

ベッドの上でスマホを使用する女性
写真=iStock.com/Pongchart
※写真はイメージです

コロナで婚姻が減ったという報道もありますが、それは違う。コロナ禍の3年間で結婚したカップルというのは、少なくともコロナ禍前の2019年以前にすでに交際していたからです。それは、出生動向基本調査による「結婚した夫婦の平均交際期間」が4年以上であることからも判断できます。

必要なのは一過性のバラマキではない

コロナによって結婚式を延期・中止した例はあるにせよ、コロナによって結婚が減ったのではなく、コロナがあろうとなかろうと婚姻数は減少したはずなのです。むしろ、この3年間、若者に対して行った「出会いの機会」を奪った政府の「恋愛ロックダウン」の影響は、2024年以降に婚姻数の激減という形で表出するでしょう。

韓国や中国の今の「結婚滅亡」の姿は明日の日本の姿かもしれません。

少子化対策に本気で向き合うのであれば、婚姻減という本質的な問題から目を背けてはならないと思います。少なくとも「結婚したいのにできない」という不本意未婚の若者が5割近くもいるという現実は直視すべきだし、結婚できないという経済的問題も透明化してはならない。

少子化対策という名の下で今出されていることは、いうなれば選挙対策でしかない。必要なのは一過性のバラマキではありません。多くの若者が若者のうちに人生を諦めてしまうような社会であってはならないでしょう。

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