国会界隈の密室でなれ合い、登院しても何をしているかわからない有象無象の国会議員たちよりも、海外に身を置いてしがらみのない立場から国会議員のスキャンダルを暴くほうが世の中の役に立つという思考回路は、それなりに理にかなっている。ガーシー氏の言動は毀誉褒貶きよほうへんが激しいにせよ、彼が獲得した約28万票を単なる「ひやかし」「面白半分」と切って捨てることはできない。

公約通りに国会を堂々と欠席し続けるガーシー氏に対して、自民、公明、立憲民主、維新、国民民主、共産の主要政党は足並みをそろえて「議場での陳謝」を求める懲罰を決定。それでも帰国に応じなかったことを受けて「除名」に踏み切る方針だ。

70余年ぶりの除名をどう受け止めたら良いのか。ガーシー氏の言動への評価と国会の対応を分けて考えてみたい。

曇天の国会議事堂
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旧態依然たる既成政党への批判票

コロナ禍でリモート勤務が日常になった今、「登院しなくても国会議員としての仕事は果たせる」という主張が出てくるのは十分に予期できた。「勤務形態より勤務実態」を重視するのは自然な流れだろう。

ゼレンスキー・ウクライナ大統領のオンライン国会演説が日本の防衛政策の方向性を大きく変え、れいわ新選組の舩後靖彦参院議員がパソコンの音声で代表質問を行い、天畠大輔参院議員が「あかさたな話法」で代読者を通じて質問する姿を目の当たりにして、「従来の対面形式に限らず多様な審議の形があっていい」「リアル審議に限定するほうが国会の機能を狭める」という声が出てくるのは、むしろ健全といっていい。

国会のしきたりよりも「海外からスキャンダルを暴く」という過激で斬新な国会議員像に共感する有権者が一定数いたことも驚くに値しない。ガーシー氏は有権者が違和感を抱く「国会の歪み」につけ込んで支持を獲得した。

中身や程度の差こそあれ、国会改革の遅れを可視化する手法は「身を切る改革」を掲げる維新や「重度障害者ら当事者を国会へ」と訴えるれいわなど新興勢力が採用してきたものだ。既存政党は、旧態依然たる自分たちへの批判票がガーシー氏を参院議員に押し上げたという現実を率直に受け止めなければならない。

「海外からスキャンダルを暴く」と公約したものの…

ガーシー氏の第一の失敗は、「海外からスキャンダルを暴く」という公約を掲げたこと自体ではなく、当選から半年余の間に公約の成果を目にみえる形で示せなかったことにあると私は思う。

立花孝志党首はガーシー氏について「国会議員の不正、経済界の不祥事を暴いていくのが仕事」と説明してきたが、当選後に投稿したのは自民党の国会議員2人の女性問題などにとどまり、政権を揺るがすスキャンダルにはつながらなかった。