わが子の算数苦手意識を解消させるにはどうしたらいいのか。プロ家庭教師「名門指導会」代表の西村則康さんは「よくあるのは九九が全部言えるのに、8×9=72(はっくしちじゅうに)ってどういう意味か説明して、と尋ねると、口ごもってしまうケースは珍しくありません」という――。

※本稿は、西村則康・辻義夫『理系が得意になる子の育て方』(ウェッジ)の一部を再編集したものです。

イチゴ
写真=iStock.com/digihelion
※写真はイメージです

算数が苦手な子の「九九あるある」

1年生の「10の補数」や足し算、引き算の学習を経て、2年生で九九の学習が始まります。教科書では、乗り物に3人ずつ乗っているとして、それが4台ある場合、「1つ分の数×いくつ分」で「全部の数」を求めることができるということを、イラストを交えながら解説しています。

「1つ分の数×いくつ分=全部の数」を式にすると「3×4=12」と書くんだよ、これは「3+3+3+3=12」と同じ意味なんだよ、計算をすべて足し算でやっていくと大変だけど、掛け算でやると便利だよね――最初は掛け算をこういうふうに習い、理解を深めていくのです。

しかし、1の段から9の段へと授業が進み、九九を毎日暗唱しているうちに、一体何のために九九を覚えているのかがだんだんわからなくなってくる子が一定数います。これは「九九あるある」で、そういう子は「3+3+3+3=12」と「3×4=12」が同じことだとしっかり理解できないままなのです。

以前、これから九九を使っていこうという時期の子どもたちの学習サポートをしたことがあります。驚くことに、多くの子が「九九あるある」の状態に陥り、つまずいていました。

九九は全部ちゃんと言えるのですが、文章問題で九九を使う必要がある場面で、まず掛け算の発想が出てきません。掛け算は一体どういうときに使う計算なのか、九九の暗記をするうちにどんどん薄れていってしまうんです。

そういう子に「8×9=72(はっくしちじゅうに)ってどういう意味か説明して」と尋ねると、口ごもってしまうことがほとんどです。「1つ分の数が8で、それが9ある」と言葉で説明できないのですから、文章問題から掛け算の式を立てることなどできるわけがないのです。