秋篠宮殿下ご夫妻の訪英は妥当である
5月6日に行われるイギリスのチャールズ新国王(3世)の戴冠式に、日本からは秋篠宮皇嗣殿下と紀子さまが参列される方向のようだ。
天皇皇后両陛下が参列されると思っていた人もいるようだが、過去の英国王の戴冠式への出席者、日本の皇室とイギリス王室との交流のバランス、今後の天皇訪英・英国王訪日をにらんでの配慮などから、秋篠宮ご夫妻の参列は妥当だ。それに加えて、たとえ戴冠式に出席できなくとも、皇位継承順位第2位である悠仁さまも同行されたら、最高の帝王教育になる。
本稿では、戦前のジョージ6世の戴冠式で秩父宮殿下が序列一位で厚遇されたこと、エリザベス女王戴冠式へ上皇陛下が参列された経緯、日英ロイヤル・ファミリーの交流、今後の皇室外交の課題などについて、あまり知られていないエピドードを交えつつ、全体像を俯瞰して論じたいと思う。
というのは、皇室外交においては、個々の場面ではなんとなく良さそうに見える対応でも、相手国の日本の皇室に対する扱いとのレシプロシティ(reciprocity、互恵性)とか、他の国への対応とのバランスも考慮しなければいけないからだ。
深夜まで国民の祝福を受けるイギリスの戴冠式
そうした議論の前に、まず、5月の戴冠式はどのような内容なのか。詳細は未発表だが、これまでの例を参考に概要を説明しておこう。
イギリス新国王の戴冠式は、1066年に即位したハロルド2世からの伝統で、ロンドンのウェストミンスター寺院で行われる。儀式のクライマックスとなるのは、カンタベリー大主教が国王に「聖なる油」を塗る塗油(アノインティング)と、重さ約2キロもある聖エドワードの王冠の戴冠(クラウニング)である。
こうした古典的な戴冠式はかつてあちこちの国で行われてきたが、現在残っているのは、英国とトンガ王国だけのはずで、それ以外は「即位式」などとはいうが、「戴冠式」ではないのである。
カミラ王妃の戴冠式も同時に行われる。エリザベス女王の戴冠式では、フィリップ殿下は戴冠などされなかったのみならず、散々難色を示したのに、臣下を代表してひざまずかされて、妻である女王に忠誠を誓ったのだから、男女平等など無視である。先鋭的な男女差別反対論者もこの男性差別には寛容なのが不思議だ。
デンマーク女王の夫だった故ヘンリック殿下は、王妃はクイーンなのだから男女平等の時代には、女王の夫もキングであるべきだと訴えて大騒動になったくらいだ。
戴冠式の後は、317カラットのダイヤモンドをあしらった「大英帝国王冠(インペリアル・ステート・クラウン)」(重さ約1キロ)を被ってバッキンガム宮殿までパレードし、そのあと、やはり王冠をしたまま宮殿のバルコニーに深夜まで何度も出て国民の祝福を受ける。