被災を免れた自治体が運営を担うべき

ぼくは最近もイタリアの災害支援の現場を視察しました。イタリアでは被災自治体の職員が避難所運営にかかわることはありません。もしもAという州で災害が起きた場合、近隣のBという州の職員が48時間以内に避難所を設置し、運営しなければならない仕組みになっています。避難所の設置や運営のマニュアルに従って、B州の職員が支援活動を行う。

一方日本の災害対策基本法では、災害支援、災害救助の主体は市町村と決まっています。日本には1741の市町村があるので、支援のありようが1741通りも存在する。もしもいま、ここ(大阪府八尾市)で災害が起きたとしても、八尾市の職員が支援を行う必要がある。隣の東大阪市が無傷だったとしても、東大阪市の職員が簡単に支援を行える枠組みはないんですよ。

これって、おかしいでしょう。日本もイタリアのように被災を免れた近隣の市町村が相互に支援を行う仕組みを早急につくる必要がある。

ボランティアもシステム化されている

それに日本とイタリアでは、災害支援を行うボランティアの考え方も違います。イタリアでは、あらかじめ専門の訓練を受けた人が国や自治体から交通費や宿泊などの補助を受けて被災地支援を行います。たとえば、運転手は物資の輸送を担当し、料理人が避難所の食事をつくる。しかし日本ではシステム化もされていない上、専門性も問われない場合が多い。日本の災害支援には生産性という考え方がまったくないのが、問題と考えているんです。

――災害支援の生産性ですか?

要は投入したリソースでどれだけ効果がえられるか。ぼくは、中小企業の経営者だから、生産性をいやでも意識してしまう。それなのに日本では災害が発生するたび、被災地の倉庫まで物資が届いているのに、必要とする避難所や被災者の元に行き渡らないという問題が起きる。限られた人材や物資でいかに効率的に支援活動を行うのか。そこが日本の災害支援に決定的に欠けている考え方と思うのです。