大学生協でウケたワケ

そもそも開発当初から「味は良かった」(河合氏)という商品の質の高さに加え、30円という価格設定。黒に金の英字、という駄菓子には珍しいパッケージデザインも、若者には面白いと好意的に捉えられた。

子どもには「高すぎる駄菓子」は、若者にとってありがたい「コスパが高いお菓子」だった。意地悪な言い方をすれば、偶然にも「商品と市場が合致」したといえる。

さらに、2008年に一気に知名度を上げる。北京オリンピックにて体操の内村航平選手の「現地に持ち込むほどの好物」とのコメントがメディアで取り上げられたのだ。

ブームとともに始まった迷走

その結果、生産が間に合わないほど売れ、品切れが続く状態に。2009年には年間生産本数が1億個を突破するほどで、これを受け2011年に愛知県豊橋市の新工場を稼働させた。

ブームに乗り、期間限定商品の販売を開始。売り上げ好調を見て、市場の声はこれだと、ブラックサンダーの派生商品を次々と出していくことになる。

例えば、大豆のパフが配合されたんぱく質がとれる「モーニングサンダー」や、ビターに近いチョコレートを使った「ブラックサンダーゴールド」、「クリスプサンダー Wナッツカーニバル」など。

「今から振り返れば、これ一体なんの味なんだという商品ばかりですよね。でも、当時の商品検討会議は毎回大盛り上がりだったんです。『これってブラックサンダーらしいよね』と、社員のアイディアを次々に商品化していった」と、開発担当に関わっていた河合氏は振り返る。

有楽製菓の河合社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
有楽製菓の河合社長

商品開発時に市場マーケティングを行うよりも、その分を価格に反映したいと考える同社は、商品の反応を見て、次の商品開発に生かす。

新商品が出るたびに好意的な反響が返ってきていた当時、「ブラックサンダーらしく、かつ新しい味」を出すことが、顧客にとってベストな選択と信じきっていたのだ。

「大学生がサークル内だけの話で盛り上がっている状態ありますよね。内輪ノリ、まさにそんな状態でした」(河合氏)