日本で一番売れているチョコレートは有楽製菓の「ブラックサンダー」だ。支持されるブランドになるまでには、どんな苦労があったのか。そこからどんな教訓を得たのか。ライターの圓岡志麻さんが、有楽製菓の河合辰信社長に聞いた――。

ブラックサンダーが「日本で一番売れる」チョコになるまで

ブラックサンダーと言えば、食べ応えのある高コスパチョコ。黒に黄色のインパクトあるパッケージや、「義理チョコの定番」を訴求するキャンペーンなどのおかげか、ちょっとクセの強いブランド、というイメージがある。

知名度、人気ともに高く、2021年度はチョコレート市場売上個数No1.を獲得している〔インテージSRI+チョコレート市場 期間2021年4月~2022年3月 推計販売規模(個数)〕。

このように今はメジャーな存在となっているブラックサンダーだが、発売元の有楽製菓(本社:東京都小平市)によると、ブランドとして定着するまでには紆余うよ曲折があった。

有楽製菓本社外観
撮影=プレジデントオンライン編集部
有楽製菓本社外観

中でも、2010年代半ばは新商品の売り上げが振るわない低迷期に陥った。新商品を出せば出すほど、それが会社の屋台骨であるブラックサンダーブランドを揺るがすという事態に陥ったのだ。

回復のきっかけになったのが、ブラックサンダーのプレミアムシリーズとして2020年9月に発売された「ブラックサンダー 至福のバター」だ。価格も従来の30円から大きく上がって50円の同品は、自社製というバタークッキーに焦がしバター配合のチョコレートを合わせた味わいもリッチなブラックサンダーだ。

ブラックサンダーが日本一のチョコレートに至るまでの道のり、その過程で得た教訓について、有楽製菓の河合辰信社長に聞いた。

新商品はまさかのスタート

ブラックサンダーの発売は1994年。

有楽製菓は子ども向け駄菓子メーカーとして、パフとピーナツを固めたチョコバー「チョコナッツスリー」を主力としていた。この軽い食感に対して、「ずしっ」とくる重さ、食べ応えのあるザクザクした食感の駄菓子として誕生した。

子どもが好きな“戦隊モノ”を連想させるということで、「ブラックサンダー」と名付けた。

しかし、あまり売れなかった。

ひとつは価格。「チョコナッツスリー」が20円だったのに、原材料にこだわった「ブラックサンダー」は30円と駄菓子にしては高価だった。

またパッケージも「BLACK THUNDER」と英字表記になっていて、子どもには読めない。翌95年には終売に追い込まれた。

だが、九州の営業担当だった1人の社員の熱い説得により、96年にエリアを限定して販売を再開。すると、大学の生協で徐々に売れ始めた。これをきっかけに、2004年、西日本地区のセブン‐イレブンでの販売が実現。翌年には全国で販売されるようになった。