貴重な若手→働き盛りの中堅→単なるベテラン

30代半ば以降の中堅社員やベテラン社員の異動配置については、「あまり明確な方針がない」「個別対応になる」という回答がほとんどになります。確かに、年代層が上がるにつれて、だんだんと方針があいまいになって個別対応に近くなってきます。とはいえ、各年代ごとに各社に共通する傾向もあります。また、30代半ば以降は何歳になっても同じというわけではありません。やはり、年代層によって異動配置方針が変化していきます。

図表2は新入社員から10年刻みで見た異動配置傾向の俯瞰ふかん図です。図中の[A]→[B]→[C]に注目してください。もしかすると皆さんには「悲観シナリオ」に見えるかもしれません。しかし、これは確率論としては、ミドルパフォーマー、すなわち、多くの普通のビジネスパーソンが辿ることになりがちなシナリオなのです。

【図表2】年代層別に見た異動配置
藤井薫『人事ガチャの秘密 配属・異動・昇進のからくり』(中公新書ラクレ)より

ざっくり言うと、[A]貴重な若手→[B]働き盛りの中堅→[C]単なるベテランへと至るルートです。別の表現をすると、[A]引っ張りだこ→[B]戦力カウント→[C]放出対象と言えなくもありません。どうして、このような筋書きになるのか。そのヒミツは、30代半ばから40代前半の10年間に隠されています。

30代半ば〜40代前半は管理職登用の「適齢期」

新入社員から10年も経てば、すっかり中堅です。転職経験がある人も同じです。誰しもこの年代で「まだ、半人前です……」というわけにはいきません。すなわち、プレーヤーとしては各部門で一人前の戦力として頼りにされている人たちのはずです。では、この年代に対する人事部の最大関心事は何だと思いますか?

皆さんがプレーヤーとして機能していることは、すでに織り込み済みです。もちろん、戦力になっていないローパフォーマーがいれば、新たなマッチング先探しも人事部の仕事のひとつになりますが、最大関心事ではありません。プレーヤーとしての戦力化や適性判断、育成が主要なテーマになるのは若年層です。

30代半ばからの10年に対する人事部の最大関心事は、なんだかんだといって「管理職の選抜と登用」です。

管理職は組織の要です。各組織に適切な管理職を配置することは、人事にとっても経営にとっても極めて優先度が高い超重要課題です。「管理職の異動配置調査」では、課長登用は35歳前後から始まり、40歳前後がピークになっています。また、「働く1万人の成長実態調査」(パーソル総合研究所)では、「出世したい」と思う人と「出世したいと思わない」人の割合が42.5歳で逆転することがわかっています。

働く側から見て42.5歳を境に「出世したいと思わない」人のほうが増えるのですが、実は、会社側も新たに課長に登用する際の上限年齢を設定していたりします。管理職になりたいと思っても、適齢期を超えると管理職になれる確率がガクンと落ちるのが実態です。つまり、30代半ば〜40代前半の10年間とは、人事部から見ると、管理職に登用すべき人は登用しつくす10年間なのです。