職場でハラスメント的な行為を平気でする同僚を注意してもよいのか。人材育成コンサルタントとして、ハラスメント行為者へのカウンセリングを専門に行う松崎久純さんは「直接注意してもよいが、事故が生じる可能性があるから、巻き込まれないように気をつけなさいというスタンスで伝えてみてはどうか」という――。

低俗な話題を振りまく同僚

メーカーで、全員がスーツを着ている堅い職場なのですが、風俗店の話などを平気でする同僚がいます。聞きたくなくても耳に入ってきて、それだけでも十分にハラスメント的な行為に感じます。雰囲気が悪くなるとしても、こんな人には注意をすべきでしょうか――30代前半の会社員の方からの相談です。

私のメーカー勤務時代にも、同じような人がいました。

彼は風俗店でもらった名刺を何十枚も重ねて、机の引き出しに入れており、それを見せびらかして、他の社員と盛り上がっているような人でした。

既婚者でしたが、私たちの事業部では出張の手当が現金支給だったため、家族には内緒で、それを遊びに使っていたようです。

詮索していたのではありませんが、そうした事情から、風俗店の名刺などは自宅には置いておけないように見えていました。

プライベートで何をしようと自由ですが、彼がそんな話をするたびに、職場に低俗な話題を持ち込むのは、モラル・ハラスメントとしか思えなかったのを覚えています。

「強制じゃないんだけど」と飲み会を強制

(当時はハラスメントという言葉が定着する前でしたが、)彼のハラスメント的な行為は、他にもさまざまなものがありました。私が特に気になっていたのは、彼が新入社員の女性を頻繁に飲みに誘うことでした。

新宿区の繁華街
写真=iStock.com/krblokhin
※写真はイメージです

1対1ではありませんが、何かと理由をつけて飲み会を開催し、そこに誘うのです。よく聞こえてくるのは「(参加は)強制じゃないんだけど」というセリフでした。

これは、飲み会などに(本当は無理にでも、その相手の)参加を促したい人が使う常套句じょうとうくです。

「強制ではない」などと言われても、先輩から繰り返し声を掛けられれば、若い人は何度かに一度は付き合わざるを得ません。

それにもかかわらず、自分から参加したいわけのない女性社員に頻繁に誘いをかけるのは、ハラスメント以外の何物でもないでしょう。

そんなことをして人を飲みに付き合わせて何が嬉しいのかと思いますが、「強制ではない」と、相手に配慮をしているようなポーズをつけて、実は相手の気持ちなど尊重していないのが、ハラスメントをする人たちの特徴の1つです。

ただ新入社員の女性を飲みに誘いたいだけという、本人が何を考えているのか、周囲にはバレバレの行為――こうしたセクハラまがいのことをする社員の存在は、職場のモラルを下げてしまいます。