米シンクタンクのランド社のアナリストであるマイケル・ボナート氏は、同誌に対し、ウクライナ戦での消耗に起因する可能性がある墜落も含めるとさらに数が膨らむと指摘している。ボナート氏によると、昨年9月から11月下旬までの約3カ月間で、少なくとも6機の軍用機が墜落したという。

ボナート氏はインサイダー誌に対し、民間機および軍用機の墜落が「続いており、ことによると増加している」との見方を示しており、重大事故の発生は収束しそうにない。

全旅客機の3分の2が整備不良になっている

このように絶えないインシデントは、決して自然発生したものではない。ウクライナ侵攻のしっぺ返しによるとの見方が濃厚だ。

ロシアの航空各社は、ウクライナ侵攻後の国際的な経済制裁を受け、国外の航空機製造大手から保守パーツの供給を断たれている。侵攻からほぼ1年が経過したいま、これが数々の事故につながっていると専門家らは指摘している。隣国の急襲を試みたプーチン氏の行動は、自国の航空産業の首を絞めることに帰結したようだ。

墜落の大半は、こうしたパーツ不足を受けての整備不良に起因するとみられる。米国公共放送協会の傘下にあるラジオ・フリー・ヨーロッパは、今年1月に発生した7件の重大事故のうち、2件の人為的ミスを除き、大半の5件が機械的な不良によるものだと指摘している。

現在ロシアでは、全旅客機の3分の2が満足な整備を受けられていない可能性がある。英ガーディアン紙は昨年3月、オランダに拠点を構えるエアバス社とアメリカのボーイング社がともに、ロシア航空各社に対するサポートを停止したと報じている。

旅客機の機内
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経済制裁で部品が調達できない

記事によると両社とも、国際的な経済制裁の枠組みにのっとり、メンテナンスの提供、技術サポートの提供、およびスペアパーツの納入の停止に踏み切った。同紙によるとロシア航空業界では、ボーイング332機およびエアバス304機が使用されている。

さらに、独航空整備企業のルフトハンザ・テクニック社も対ロシアのサービスを凍結した。ガーディアン紙は「こうした動きにより、ロシア航空業界はますます孤立してゆくだろう」とみる。

ラジオ・フリー・ヨーロッパによると、12月にはメッセージアプリ「Telegram」の航空専門チャンネルを通じ、国営の航空エンジン企業が業界内に苦肉の策を案内しているとの情報が拡散した。

同社はリージョナル・ジェットであるスホーイ スーパージェット100の燃料フィルターについて、本来は新品交換が求められるところ、ブレーキオイルを用いて洗浄し再利用するよう推奨し出したという。