デイリー・メール紙も、1月10日までの10日間で16件の重大インシデントが発生したことを挙げたうえで、制裁による部品の調達不足が一連の事故の原因であるとの見方を示している。
EUやアメリカから新しい機体をリースすることも不可能となり、「老朽化した航空機が毎日ロシア中を飛び続けている」状態だと記事は指摘する。
クリミア侵攻後と同じパターン
このように民間機の墜落では、経済制裁の影響が主因と考えられている。
一方、軍用機に関してはさらに、旧型機を酷使せざるを得ない状況によって事故が加速しているようだ。専門家は、ウクライナ侵攻後の事故増加は、過去とまったく同様のパターンを描いていると指摘する。
ロシアでは過去、2014年のウクライナ紛争で軍用機を重用した翌年にも、墜落事故が相次いで発生した。匿名のロシア国防省関係者は2015年、米軍事ニュースサイトのディフェンス・ニュースに対し、古い航空機の酷使と慢性的なパイロット不足がこうした事故の原因になっているとの内情を明かしている。
また、米シンクタンクである戦略国際問題研究所のポール・シュワルツ上席分析官(ロシア担当)は同サイトに対し、「過去1年半で軍事行動が加速したことと、軍用機関連で事故が増加している事実には、明白な関連がある」と断言している。
ロシア軍ではもともと機体の更新が滞っており、設計上の寿命を超えて運用しているケースが少なくない。そこへウクライナ侵攻により許容範囲を超えた負荷がかかるようになり、敵方から直接被弾するまでもなく自ら墜落するケースが発生しているようだ。
航空機の「共食い」でその場をしのぐ
苦境のロシアは、航空機同士を「共食い」させることで急場をしのいでいる。すなわち、航空機を補修するにあたり、別の同型機を解体することでパーツを工面している。
インサイダー誌は今年1月、「ロシア航空各社はすでに、制裁で入手不可となったスペアパーツを確保するため、ジェット機を共食いさせている」と報じた。
この結果、保有機の8割が使用不能という航空会社も現れた。ラジオ・フリー・ヨーロッパは、ロシアのビジネス紙『ベドモスチ』が昨年11月に報じた内容を伝えている。
記事によると、ロシア連邦内サハ共和国に本拠を構えるヤクーツク航空では、保有機の実に80%が運航不能となった模様だ。整備不良に加え、共食いの対象となったことで飛べなくなる事態が起きているという。
一部には、ロシアが国外航空会社へのリース返却を一方的に拒んだ機が犠牲となっているとの観測もある。