大都市部はバブル経済期にランク急落
1965年時点の全国平均は男性67.74歳、女性72.92歳。2020年の全国平均は男性81.49歳、女性87.60歳なので、日本人は半世紀の間に13~14歳ほど寿命が延びたことになる。
図表1を見て、まず気づくのは、下位県は東北とその周辺の県が多く、それは、現在も過去も同じだということだ。男女総合で下位4県である青森、福島、秋田、岩手は1965年にも男女とも最下位グループにあった。
それに対して、上位についてみると、かつては大都市部の順位が明らかに高かった。1965年には、東京が男女ともトップだったのに、現在は男性が14位、女性が17位に落ち込んでいる。
急速にランクを落としたのは、バブル経済で東京一極集中が進んだ時期で、1995年には、男性20位、女性33位まで落ちた。
東京通勤圏のうち、埼玉はほぼ横ばいだが、茨城、神奈川、千葉も順位をかなり低下させている。これは、首都圏の急激な人口増加に医療体制の整備が追い付かず、寿命が伸び悩んだ可能性が強い。
大阪は1965年には男性12位、女性13位だったが、1985年に男性46位、女性47位と最低水準に落ち込んだ。その後も大きくは回復できず、現在は男性41位、女性36位だ。
橋下知事の登場は2008年であるから、医療問題を含めた維新の改革がゆえに低下したということではありえず、むしろ、可能性としては革新府政の時代の責任を挙げるべきだろう。
喫煙や飲酒よりスポーツを好む滋賀県人
2020年の男女総合トップ5は、滋賀、長野、京都、奈良、岡山で、大阪が低迷しているのと対照的に、長野を除いては関西圏が並んでいる。
このうち、滋賀県と奈良県は、大阪や京都のベッドタウンとしてだけでなく、職場や大学が急速に移転し、人口も増えたし、所得や税収も上がった。京都や大阪に依存していた総合病院も充実し、戦時中にできた軍医養成のための医専が発展して奈良県立医大となり、滋賀県には滋賀医科大が創立された。
平均寿命は両県ともほぼ一貫して順位を上げているが、とくに滋賀県は、1965年には、男性27位、女性31位だったのが、2020年には男性1位、女性2位、男女総合でも全国トップとなった。
県が作成した資料「滋賀県の長寿のヒミツはこれだった⁉」によると、たばこを吸う人や多量飲酒をする人が少ない(男性1位と4位)という。これは大事な理由だ。
スポーツをする人が多い(男性2位、女性6位)、学習・自己啓発をする人が多い(男性5位、女性6位)、ボランティアをする人が多い(男性2位、女性4位)などは、都会からの転入者が、恵まれた環境を活用した生活スタイルを楽しみ、それに地元民も触発されたように思う。
また、失業者が少ない(2位)、県民所得が高い(4位)、所得格差が小さい(ジニ係数2位)などは経済開発成功の成果だ。