続けることこそ症状の進行を遅らせる特効薬

では、なぜ、できることを続けることで、症状の進行を遅らせられるのか――。

和田秀樹『ぼけの壁』(幻冬舎新書)
和田秀樹『ぼけの壁』(幻冬舎新書)

そのメカニズムは、今の医学では、理論的な説明は難しいのですが、多数の疫学的調査と臨床的経験から専門医の間では常識的になっていることです。

私自身は、その理由のひとつは、私たち人間がそもそも脳の機能の10%ほどしか使っていないことが関係しているとみています。認知症が進行しても、「できること」を続けていると、それまで使っていなかった健常な神経細胞が、失われた部分を補完するのではないかと思うのです。

つまり、できることを続けることが、脳の余力を引き出し、結果的に進行を遅らせるというわけです。

だから、認知症と診断されたとき、最も避けたいのは、「もうボケたのだから、◯◯をやめよう」、あるいは周囲の「やめさせよう」という発想です。

そうして、脳や体を使わなくなる(使わなくさせる)ことが、認知症の進行を早めてしまうのです。

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