NHK大河史に残る名シーン

4位 内野聖陽 50点「真田丸」(2016年・NHK)

クセの強い二枚目・内野が演じた家康は、阿茶局(斉藤由貴)の尻に敷かれ、武将らしからぬびびりや、小物感全開でスタート。

内野家康の間抜けさを際立たせたのは、徳川家重臣・本多正信役の近藤正臣でもある。徳川家の狡猾さや侮れなさの源は手練れの本田と言っても過言ではない。

「あれには子がおらん」「跡継ぎがいるというのはありがたいことだ」と、子供がいない秀吉を暗にディスり、底意地の悪さとマウンティングも際立つ。

脚本・三谷幸喜は徳川家康という武将にそんなに興味がないのだとも思う。ただし、全編を通して内野家康が見せたのは「根っこは平和主義」。戦の虚しさを最も痛感している家康公だった、と記憶している。

3位 寺尾聰 50点「軍師官兵衛」(2014年・NHK)

たったワンシーンで強烈な印象を残したのが寺尾家康。

役どころとしてはメインではないのだが、政局の流れを静観し、沈思黙考タイプの家康を演じた。ずっと片目を閉じていて、言葉少ない寺尾家康。

で、問題のワンシーン。耄碌もうろくしてせん妄まで起きている秀吉が死んだ瞬間、閉じていた目をパカーン! と開けた寺尾家康。

NHKアーカイブスの特集記事には寺尾のコメントが。「五感のすべてで周りの動きを感じ取り、自分がトップに立つのを虎視眈々とねらっているイメージ。大きく見開いた左目で相手を見つめつつ、細めた右手で相手の裏の顔をうかがうという思いを込めた」という。

いや、もう、さすが! 膝を打ちまくったことを思い出した。

威厳が全くない人間・家康

2位 阿部サダヲ 60点「おんな城主直虎」(2017年・NHK)

井伊直虎を女性として描いた異色作、主演は柴咲コウ。何かと井伊家と縁の深いのが阿部サダヲ演じる家康だ。

家康を「古狸」「狸オヤジ」と描くことが多かったが、阿部家康は新たに「豆狸」の称号を得た。中盤まで威厳という威厳はなく、今川・織田・武田の戦況に流しに流される役どころ。

井伊家再興の約束を反故にし、直虎から責められるも、土下座したまま無言で後ずさりするシーンが忘れられない。

その後、出世して罪滅ぼしに井伊家を何かとフォローしたのが、せめてもの救い。また、愛する妻・築山殿(菜々緒)と息子・信康を犠牲にしてしまったことを悔い、献杯する場面も。人の心は残っている。罪悪感もある家康像だった。

そして、堂々の1位はドラマではなく、映画のあの人。