「ああ、それ、わかる」は嫌われる
→「わかる」から「わかる気がする」へ
相手と会話しているとき、あなたは、つい、こんな相槌を打っていませんか?
「ああ、それ、わかる!」
ここでうかがいます。
「あなたは、それを本当にわかっていますか?」
もしかして、想像でわかったような気になっているだけではありませんか?
私もあるとき、こんなことがありました。
ある人から、「林さん、上司から『もっとロジカルに話せ』と言われてしまったのですが、どうしたらよいのでしょう?」という質問メールが届いたとき、私はつい、反射的に「わかる、それ」と返信しかけて、ハタとメールを打つ手が止まったのです。
そして、こんな言葉が頭に浮かびました。
「あれ? 自分は本当にわかっているのかな? もしかしたら、わかっていないかもしれない」
そして、相手にはこう返信しました。
「そうなんだ。もっとロジカルに話せって言われたんだね。なんかそれ、ちょっとわかる気がする」
何が言いたいのかというと、たとえ、どんな場合でも、相手の言葉に対して「わかる、それ」と言い切るのではなく、「わかるような気がする」と言うようにする。だって、あなたはその人本人ではないのですから、相手の気持ちの全部なんて、どう考えたってわかるはずがないのです。
こんな会話、つい、していませんか?
「○○という映画を観て、メチャクチャ感動したんだよ」
「あー、わかるわかる! 私も感動した!」
いやいや、相手が感動した場面と、あなたが感動した場面はぜんぜん違うかもしれません。
相手には相手の育ってきた人生があって、映画の主人公と自分の人生がリンクしたから大感動したのかもしれません。または、相手は、映画そのものより、出演していたある俳優の演技に感動したのかもしれません。
それなのに、わかったような気になって、「わかるよそれ」って返すと、もしかしたら、相手は「ちぇっ、なんにもわかっていないクセに」って思うかもしれない。
ですから、相手とよりよい関係を築くうえでも、安易に「うん、わかる、それ!」を使うのは要注意なのです。
「わかる気がする」
「半分くらいわかったかも」
「なんとなくわかるよ」
「8割は理解した」
など、「全部はわからないけど……」という含みを残すのがお勧めです。
おおやけに発表されているデータや、ニュースで報道されているものなどの事実情報は「わかる」でもオーケー。ただ、主観や感情については、「わかる気がする」のほうが話を進めやすいと覚えておきましょう。
一見すごく細かい話ですが、こういった言葉一つひとつにこだわることで、否定しないコミュニケーションは習慣になっていくのです。