ガラケーを使う高校生クラブが立ち上がった

米ニューヨーク・ブルックリンに位置する広大なプロスペクト公園の片隅に、市民に愛される中央図書館が居を構える。図書館のホールへと続く石段が、「ラッダイト・クラブ」のメンバーたちの集合場所だ。

ニューヨーク・タイムズ紙は、スマホを使わないこの一風変わった高校生クラブの活動を報じている。

記事によると、日曜日になるとどこからともなくメンバーが現れ、図書館の石段へと集う。InstagramやSnapchatでグループチャットが届いたから来たわけではない。約束の時間に、約束の場所に集まったのだ。

メンバーの一人、高校3年生のオディール・カイザーさんは、同紙に語る。「晴れても降っても、たとえ雪の日であっても、毎週日曜日になると集まります。お互い連絡は取らないから、だからこそ来なくてはいけないんです」

メッセージ1通でドタキャンできない状況が、仲間への責任感と結束を生んでいる。

彼らは意図的にテクノロジーから距離を置いている。メンバーの一部はスマホではなく、あえてガラケーしか持たない。スマホを持っているメンバーも、集会中は目に付かない場所にしまっておく。

メンバーたちは落ち葉を踏みしめて丘をのぼり、混雑したパークのなかでも静かな一角に着くと、手頃な丸太を探してきて輪を作る。そのうえに腰掛け、思い思いの時間を過ごすのが通例だ。

スケッチをし、読書に興じ、あるいはただ風のリズムに耳を傾ける。この時間だけは、だれかのきらびやかな自撮りに「いいね」する必要もなければ、溜まったソシャゲ(オンラインゲーム)のライフを消費する必要もない。

SNSで燃え尽きた17歳女性に起きた変化

ラッダイト・クラブの名は、10世紀にイギリスで起こった機械化反対運動に由来する。メンバーは文明を捨てたわけではないが、スマホとの距離を見直そうとしている。

メンバーで高校4年生のローラ・シュブさんは、ニューヨーク・タイムズ紙に対し、「折りたたみ携帯を手にした瞬間、すべてが変わりました」と語る。「脳を使い始めたんです。自分自身を人間として観察するようになりました」。本を書く余裕も生まれ、すでに十数ページを書き進めた。

クラブを立ち上げたのは、17歳のローガン・レーンさんだ。ソーシャルメディアに燃え尽きた彼女は、はじめにInstagramのアプリを削除し、ついには自身のiPhoneを箱にしまった。生まれた瞬間からこの世にスマホがあった彼女にとって、これが新しい扉を開いた。