携帯電話のスタンダードになったiPhoneとAndroid
当時としては革命的だった全面スクリーンと、直感的なタッチ操作、そしてAppleならではの親しみやすいインターフェース。iPhoneの登場は、ガラケーを過去のものにした。
業界を牛耳るはずのAppleだったが、未来を見通すジョブズにとってさえ計算外だったのは、競合OSとなるAndroidの登場だ。Mac OS(現macOS)内部の検索機能を重視していたAppleは当時、取締役会にGoogleのエリック・シュミットCEO(当時)を迎えていた。
ジョブズはiPhoneが「他社のあらゆる携帯の5年先を行く」と豪語したが、その裏側を支える数々の研究開発の成果は、すべて敵の親玉に筒抜けだったのだ。
iPhone発表からわずか10カ月後にGoogleがAndroidを発表すると、iOSのリードは急速に縮小。ジョブズは激怒しシュミットを取締役会から追放したが、後の祭りだ。以来、両OSはシェアを二分しながら、世界にスマートフォンを浸透させてきた。
スマホしか知らない世代にはレトロなアイテムに見える
こうしてスマホは携帯電話のスタンダードとなった。ところがいま、ガラケーを知らないアメリカの若者たちにとって、かえって旧式の機種が興味をかき立てている。
ソーシャルメディア疲れで距離を置きたい、通話だけできればいいという需要に応えるほか、レトロでファッショナブルなアイテムとしても注目されているようだ。
米CNNは、「Z世代がいま熱狂する最新の『ヴィンテージ』アイテムは、1990年代半ばにミレニアル世代のあいだで流行した、あの折りたたみ携帯である」と報じている。
ソーシャルメディアに気を散らされる心配がないだけでなく、まるで90年代の映画『マトリックス』に登場する「Nokia 8110」のようだとして、レトロな魅力を放っているようだ。
乗り換えを勧めるインフルエンサーも
低画質のカメラが生み出す独特の風合いも新鮮に受け止められ、ガラケーのカメラでいかに美的な写真を撮るかを指南する動画もTikTokに登場している。
2台持ちで使い分ける若者もいる。CNNによると、イリノイ大学のある学生はスマホを持っているが、人と会うときにはあえてガラケーだけを持って行くという。人々の目を引き、新しい友人関係をつくるための絶好の会話の糸口になるようだ。
別の学生はCNNに対し、「折りたたみ携帯を持って出掛ける人々は増えていると思います」と語る。「楽しくてノスタルジックだし、率直に言って雰囲気がいいですから」
アメリカではいまでも新旧の機種が販売されており、手頃なものでは契約プランによって20ドル前後から手に入る。
米俳優のダヴ・キャメロンがガラケーに乗り換えたほか、TikTokのインフルエンサーのなかにも乗り換えを勧める人々が出てきた。