今後の日本社会にとって最大の危機のひとつは間違いなく少子高齢化の進行です。現在、約1億2760万人いる総人口が、40数年後の2055年には9000万人となり、65歳以上の高齢者の比率も現在の22パーセント強から40パーセントにまで高まると予想されています。世界に類のない早さです。抜本的な解決策としては、やはり短期的には人口ピラミッドを人為的に変えるしかないのではないでしょうか。
私は移民には原則賛成です。もちろん、100%それが正しいとは思いませんが、人口ピラミッドの現状を考えた場合、良質の移民なら受け入れるべきだと思っています。これまで何度か別の本で移民賛成論を書いたこともあります。が、正直、あまり評判はよくありませんでした。
移民はとにかく反対、という人に冷静になって考えていただきたいのは、日本の人口が今後、急減するという冷厳な事実です。高齢化率も上昇します。社会の担い手がどんどん少なくなるのです。働き手として家族を支え、消費者として企業にお金を支払い、納税者として社会を支えてくれる人が圧倒的に不足するのです。
こういった状況は人口ピラミッドを見れば一目瞭然です。日本の人口ピラミッドは非メタボ、超逆三角形です。下腹部が貧弱で、明らかにやせ過ぎで、バランスが非常に悪いのです。
この不安定な形を直して、健全な日本を取り戻すにはどうしたらいいか。これも移民をひとまとまりの集団と考えずに、分けて考えることで解決の糸口が見えてきます。
まずは、質の高い外国人を移民として受け入れること、これが日本の人口減に対するもっとも有効な処方箋になるのではないかと私は考えています。
年代でいえば、やはり20代~30代の若い人たちが望ましい。若い人はそれほど医療費を使わないから、というのがその理由のひとつです。65歳以上の人が年間使う医療費は平均約60万円、これに対して65歳未満は10万円程度。若い人は高齢者に比べて病気をしないので、差が出るのは当然です。移民を受け入れ、医療保険にも加入してもらえば、悪化した医療財政の改善にも貢献するでしょう。
移民に成功した国として、オーストラリアの例が参考になります。私たちが子供の頃、オーストラリアは「白豪主義」の国だ、と学校で習いました。白人以外の人種を排除することが国の政策だったのです。その起源は1901年に成立した「移民制限法」です。当時、中国から金採掘業者として多くの労働者がオーストラリアに流れ込み、非白人への反感が高まりました。そこでアジアやアフリカからの移民受け入れを阻止する法律をつくったというわけです。
しかし、1970年代になると、にオーストラリアはその政策を転換します。行き過ぎた排外主義が経済発展のさまたげになるとうい危機感からです。1973年に「移民法」が成立して以降はアジアからの移民が急増しました。いまでは 人口の4分の1近くがオーストラリア以外で生まれた人たちです。
オーストラリアのやり方として注目すべきは、あらかじめ選別し、自国にとって有益な人、産業基盤を強化できる人だけを移民として受け入れたことです。つまりは、コンピュータ技術者、オーストラリアの大学で学位を取得した外国人研究者などです。
移民先進国のEU各国も、最近になって、人材の絞込みの重要性に気づいたようです。イギリスは2008年から、移民の学歴や語学力、年収、保有資格などを点数化し、一定の基準を満たした人だけに国内での就労を認める新しい制度を開始しました。市民権の取得を目指す移民には、2005年からイギリスの歴史や習慣に関する知識を問うテストが義務化されています。フランスでも単純労働者や移民の家族の流入を制限しつつ。2006年から、移民希望者にはフランス語の試験を課し、水準以下の成績しかあげられなった人には補習授業を義務付けています。