「クルマを創り続ける社長」でありたい

豊田さん自身が「自分らしく」経営してきたのだから、佐藤さんにも「そうすればいい」と助言したのだろう。

対して、佐藤さんもまた顧客志向と自分らしさについて、会見ではこう語った。

「トヨタはグローバルな会社。地域に密着し、地域のお客様に寄り添っている会社。それを忘れるなよと。従業員の37万人に対して(地域のお客様には)全力で向き合えという思いがある」

「新社長就任の内示をいただいたとき、豊田社長からは、『自分らしくやりなさい」という言葉をかけていただきました。今、新しい経営チームの中で、『自分らしく、役割を果たそう』と考えています。

『自分らしく』ということで申し上げますと、私は、エンジニアで、長くクルマ創りに携わってまいりました。クルマを創ることが大好きです。だからこそ、『クルマを創り続ける社長』でありたいと思っています」

(引用はいずれもトヨタイムズ動画から起こしたもの)

トヨタの社長、会長の仕事とはなにか

次期社長の佐藤さんのミッションはチームを編成してモビリティを創り、普及していくことだ。自動車だけでなく、空飛ぶクルマなど、これまでよりトヨタの商品構成は幅広くなるのだろう。

ただ、与えられたミッションだけがトヨタのトップの仕事ではない。これまでの例から考えると、トップがやるべき仕事とは、新事業へのチャレンジだ。

創業者の豊田喜一郎は世界一の織機会社を継ぐ男だったにもかかわらず、スピンアウトして自動車会社を興した。息子の豊田章一郎はトヨタホームの元となる住宅事業を始めている。そのまた息子の豊田現社長はウーブンシティの開発を開始した。

佐藤さんは豊田家出身ではないけれど、いずれ何か新事業を考え出して挑戦していく。それがトヨタの社長の仕事だから。

一方、トヨタの会長の仕事は何か。今回の会見で現会長の内山田さんはこんな考えを述べた。

「豊田章男にはもっと広い分野へ。トヨタグループの37万人、自動車産業の550万人だけでなく日本の産業界に大きく羽ばたいてほしい」