今年は物価と同時に金利も上昇する
今後の物価上昇によって懸念されるのは、所得の相対的に少ない層への影響が大きくなることだ。また、物価上昇によって年金の受給額は増えるものの、物価上昇を勘案した実質ベースでは減少する。状況によっては、わが国における経済格差が広がることも考えられる。ミクロで考えた場合、企業が物価上昇などを克服して成長を目指すために競争原理を取り入れることは重要だ。
ただ、マクロの視点で考えると、それが経済全体でみた人々の安心感を高めるとは限らない。政府は格差の固定化などを防ぐためにしっかりとした対策をとらなければならない。また、人々が自律的に成長を目指すために学び直しの制度などを拡充することも欠かせない。
物価が上昇するに伴い、どこかの時点でわが国の金利も上昇するだろう。1999年2月に“ゼロ金利政策”が始まって以降、わが国は超低金利環境に浸った。消費者をはじめわが国全体で超低金利の記憶は強い。その分、家計や企業にとって金利上昇のインパクトはかなり大きなものになると懸念される。
その一つとして、住宅ローン金利の支払い負担は高まり、個人消費の鈍化懸念は高まりやすい。また、金利上昇は中小企業をはじめ企業の資金調達コストや元利金返済の負担も増加させる。それによってわが国経済の持ち直しペースが鈍化する展開は排除できない。