85%が「1年後も物価は上がる」と回答
物価が上昇する環境下、わが国では賃金が伸び悩む状況が続いている。深刻なことは、物価上昇の影響を除いた実質ベースで賃金が減少していることだ。2022年11月速報の毎月勤労統計調査によると、前年同月比で実質賃金は3.8%減少した。8カ月連続の減少だ。名目賃金(現金給与総額)は緩やかに上昇しているものの、物価上昇(消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合))の上昇率がそれを下回っている。
その結果、家計の生活負担は上昇している。2022年12月に日銀が実施した“生活意識に関するアンケート調査”によると、1年前と比較した場合、物価は“かなり上がった”との回答が52.7%に達した。昨年9月の調査では46.4%だった。物価上昇は家計を圧迫している。
現在の暮らし向きについて“ゆとりがなくなってきた”との回答も53.0%に上昇した。今後1年間の支出を考えるにあたって物価動向を特に重視するとの回答も増えている。1年後の物価に関しても“かなり上がる”との回答割合は32.5%に上昇し、“少し上がる”も含めると85%が物価上昇を警戒している。
「物価はまだまだ上がる」これだけの理由
懸念されるのは、当面、わが国の物価に上昇余地があることだ。特に、食料品や電気代の上昇は大きい。具体的には、東京電力は家庭向けの電気料金(低圧の規制料金)の値上げ(平均で29%)を申請した。6月から新料金の適用を目指している。
また、東京商工リサーチによると121の食品メーカーのうち、64社が価格改定を発表した。今後、1万36品の値上げが行われる。2~3月にその7割程度が実施される模様だ。5267の品目で5%以上10%未満の値上げが実施される。値上げの理由として原材料価格の上昇、資源や燃料の値上がり、包装資材などの値上がり、人手不足などが指摘されている。家庭用の食塩の価格も引き上げられる。
その背景にはいくつかの要因がある。まず、わが国では企業物価指数と消費者物価指数の上昇ペースが乖離している。その分は企業がコストとして負担しなければならない。収益を守るために、価格転嫁を加速させる企業は増えるだろう。