住宅取得に最大499万2000円の補助が出る

千代田区は地方債残高がわずか1500万円しかない一方、財政調整基金が420億円、その他特定目的基金が750億円ある。

官公庁や大企業の本社が集中する首都の中心とあって住民は高所得者ばかり。インフラの類いは国と東京都が整備してくれるため、財政難という言葉とは無縁だ。

行政サービスは当然ながらトップクラスで、子育て世帯が住宅を取得する際などは最大499万2000円の補助を受けられる支援策まで用意している(支援策:「次世代育成住宅助成」区内に5年以上居住する親がいる新婚世帯・子育て世帯、もしくは区内に1年以上居住している子育て世帯が対象。助成金(月額)は、毎月最高8万円、最長8年間まで)

2位の港区はある意味、豊かさで千代田区をしのぐ。地方債残高は1億7300万円で、歳計現金が128億円、財政調整基金が513億円、その他特定目的基金が1357億円にのぼる。

人口が千代田区の3.8倍いるため1人当たりだと少なくなるが、2021年度は借金に頼らず産業振興センターに図書館などを併設した複合施設「札の辻スクエア」(港区芝5丁目)を建設。基金などから88億円捻出し、22年4月にオープンした。

都心のタワマンブームで転入者も多く、過去5年間で人口が7900人(3.2%)増えたが、潤沢な個人住民税を原資に保育所や小学校の開校も相次ぐ。

(脚注)
地方債残高:公共施設や道路、水道、下水道などの整備に充てた借入金である地方債の残高
財政調整基金:年度間の財源不足に備えるため、決算剰余金などを積み立て、財源不足年度に活用する目的の基金
特定目的基金:教育、文化の振興や産業の活性化など、特定目的のために必要な事業に充てるための基金
歳計現金:各自治体の収入・支出に係る現金で、日々の支払いに充てるための資金

江戸川区がため込んでいる事情

6位の東京都江戸川区(36万2000円)は実質債務のマイナス幅が2495億円で全国一だった。ここも借金はほぼなく、歳計現金が317億円、財政調整基金が399億円、その他特定目的基金が1777億円あった。

基金の内訳は「学校の改築用が527億円、大型区民施設の建て替え用が736億円、災害に備えたものが200億円」(財政課)など。ゼロメートル地帯にあるため、大型台風が直撃すれば区全体が水没しかねない。その際は区長の判断で広域避難を勧告することになっており、「宿泊代を区民に補助する」(同)という。大災害に見舞われても、東京23区は国から特別交付税を受け取れないことも貯蓄に励む理由だ。

23区ではこのほか、渋谷区が3位、文京区、江東区、葛飾区が8~10位に名を連ね、裕福ぶりが際立つ結果となった。