ふるさと納税による増収
そうしたなか、岩手県陸前高田市(44万3000円)が4位につけた。市の財政需要のうちどの程度が税収等で賄えているかを示す財政力指数は0.33と全国平均(0.50)を大きく下回るのに、歳計現金が48億円、財政調整基金が63億円など「蓄え」は多い。
ただ、それにはわけがある。東日本大震災の復興事業がほぼ完了し、「国から概算で受け取っていた復興予算が余った」(財政課)からだ。「数年かけて返還する。昨年度は15億円、今年度は30億円ほどになる」(同)という。
また、5位の岐阜県高山市(41万3000円)は面積が日本一で、香川県や大阪府より広い。「飛騨高山」は観光名所として知られ、190億円の財政調整基金と257億円のその他特定目的基金を有していた。2021年度にふるさと納税で22億円超の寄付金を集めたことも「貯金」の増加につながった。
駅もスーパーもない街がランクインしたワケ
驚くのは全国の市で最も人口が少なく、市内には鉄道の駅もスーパーも農協すらない北海道歌志内市が7位に入ったことだ。
財政力指数は全国の市で最低の0.11。2007年に北海道夕張市が財政破綻した際は、同じ旧産炭地として先行きが危ぶまれた。
「当時は基金もなく、職員の給料(基本給の10~15%)を削減し住民サービス(住宅建設や除雪車両の購入)をやめるなどして再建に取り組んだ」(企画財政課)。最近の地方交付税増額や新型コロナ対策で国からお金が入ってきたこともあり、21年度末には基金全体で37億円まで積み増した。「児童館や学校をまとめた複合施設を建設する」(同)という。
かつての歌志内市は、めぼしい産業もなかったことから正職員の7割近い非正規職員を抱えて広義の人件費が膨らんでいた。そこにメスを入れたことで財政は健全化したものの、人口減少には拍車がかかってしまった。
富める自治体はますます富む構図
裕福な自治体の上位200市区のうち、実質無借金なのは57あった。このうち53市区は過去5年間で実質債務のマイナス幅を拡大させている。つまり金融資産を増やしていたわけだ。
ふるさと納税に伴う寄付金や新型コロナ対応の地方創生臨時交付金など、一時的にまとまった資金が入って基金を積み増している自治体もある。
いずれにせよ、お金があれば子供の医療費や学校の給食費を無料にするなど、住民を引き付ける施策が行いやすい。若い人は住民サービスの充実度を調べて住むところを決める傾向も強まっている。
富める自治体はますます豊かになり、格差が広がっている構図は個人と似ている。