政教分離の観点から生まれた公明党
信者の子供が円滑に信心に入っていける工夫もよくできている。いま宗教二世問題が話題になっているが、幼児洗礼までするキリスト教に比べて押しつけがましいわけでないし、神社の諸行事のほうが子供の意思を無視した強制ともいえる。
来世とか自己修練を求める宗教と違って、日蓮宗系である創価学会は現世利益を求めるので、政治を通じて社会変革を要求するのは自然であるし、初期には会員の団結の手段として選挙が使われた面もあった。
しかしやがて、政教分離の必要を感じ、公明党という独立した政治組織を立ち上げた。また、1960年代に起きたいくつかのもめ事をきっかけに、ほかの宗教団体が政治家を支援するのと同じように、創価学会は公明党が公認・推薦する候補を支援すると整理された。
「票を回す」団結と技術が他とは違う
世間では公明党、あるいは創価学会というと「鉄の結束」というイメージが先行している。「上意下達である」という印象を持つ人も多いが、創価学会は一般会員の意向に神経質な組織で、女性部(旧婦人部)の力はよく知られている。創価学会の強さの秘密は、一般会員の意見の吸い上げ重視と、指令を出す場合も丁寧に説明することだ。
もちろん、公明党の公認候補が出る選挙では団結して全力をあげて組織の内外から集票するが、国政選挙で推薦する自民党の候補者や首長選挙で支援する候補者に対しては、それぞれの場合に応じてどの程度熱心に応援するか一様ではない。
強さの秘訣は、候補者を立てる選挙を絞り、会員に過度の負担をかけないで、効率の良い選挙をすることや、信者でない人にも投票を頼むテクニックが優れていることだろう。江戸時代以来、ほとんど布教活動をしてこなかった伝統宗教と差が出るのは当然だ。
公明党は地方選挙などで複数の候補を立てていても、誰が誰に投票すべきかという票割りを厳格にして死に票を減らす。それから、政治の世界で力を持つには、「票を回す」ことができるかどうかは重要だ。自分に投票してもらうだけでなく、他の党派や候補者に投票してくれと頼んで承知してもらえる組織(政党、企業、労組、団体)や政治家は政治力が強い。