デザイナーや画家の仕事を奪うかもしれない

そんな日本でも、2022年になって画像生成AIの出現で、デザイナーやイラストレーター、画家の仕事が奪われる脅威が浮上したのです。オリジナリティが必要のない画像を作るのであれば、AIで事足りるのではないかというわけです。しかも、AIが作る絵も近頃は十分な芸術性を帯びてきています。

図表4の絵を見て、私は近代以前の王室のような崇高さと神秘性を感じさせつつも、それでいてどこか未来のおもむきがあって素晴らしいと感服しました。みなさんももう薄々分かっているかと思いますが、これはAIが生成した画像です。Stable Diffusionと同様に画像を生成してくれる「ミッドジャーニー(※6)」というAIソフトウェアを用いています。

井上智洋『メタバースと経済の未来』(文春新書)
井上智洋『メタバースと経済の未来』(文春新書)

これが、人間の作った作品を押しのけて、絵画コンテストで優勝してしまいました。一部のアーティストからは、「ムカついた!」「AIひっこめ!」などと怨嗟の声が上がっています。

米国競争力評議会の上級研究員であるマーク・ミネビッチさんが、「(AI革命は)ウォール街の魂を直撃し、ニューヨークの街全体を変えるだろう」と言ったように、AIは金融業界を劇的に変革しつつあります。

同様に、画像生成AIがこれから、デザイン、漫画、アニメ、絵画などの視覚的なコンテンツの分野で破壊的なインパクトをもたらしていくでしょう。我々は、AIの持つ潜在的なパワーのまだ1000分の1も目にしていないのです。

(※6) ミッドジャーニー(Midjourney) Stable Diffusionと同様にテキストの説明文から画像生成する独自の人工プログラム。2022年7月にオープンベータ版が発表された。

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