若返りには「注入」ではなく「排出」が重要だった

幸い、より厳格な形でこの研究を利用している企業が他にある。若い血液の何が、老いたマウスを若返らせるのかを突き止めようとしているのだ。それが血球でないことはわかっているので、おそらく何らかの水溶性タンパク質だろう。

運がよければ、原因になっている1個から数個のタンパク質を突き止めることができるかもしれない。運が悪ければ、あらゆるものがあらゆるものに影響するという生物学的迷宮にはまり込む。そうなったら物質を絞り込むより血漿の投与に留めるのが得策だ。現在、この二つのアプローチによる臨床試験が進められている。いくつかは結論を導き出し、結果を発表した。

ある研究では、アルツハイマー患者に若者の血漿を投与した。果たして結果は……効果なし。

若い血液の研究は今も続いているが、新しい研究結果は、若返り効果の原因について疑問を投げかける。若い血液に「アンチエイジング要素」と呼べる若さを保つ分子が含まれている可能性はあるが、古い血液の組成の方がもっと重要であることが判明した。老いたマウスを若返らせるのに、若い血液と入れ替える必要はないことが複数の研究によって明らかになったのである。

実験では、老いたマウスから少量の血液を抜き、代わりに少々のタンパク質を含む生理食塩水を注入しただけでマウスは同じように若返った。この事実から、重要なのは何を加えるかではなく何を取り除くかであることがわかる。古い血液には、マウスの負担になる「老化促進因子」が含まれ、それを取り除くことが有益だったのだ。

献血する人ほど長生きする理由

面白いことに、人間でもよく似た自然実験が行われている。それは献血である。

一般的な献血では、およそ半リットルの血液を失う。当初、体は失った血液の「量」を体内の水分で回復し、その後の数週間で血球やさまざまな「成分」を補充する。これが意味するのは、献血者が生理食塩水を注入された老いたマウスと似たような経験をするということだ。

もし時々少量の血液を抜くことに何らかの延命効果があるのなら、その効果は献血者に見られるはずだ。デンマークで行われたある研究では、まさにこの効果を調べ、ある事実を発見した。

継続的に献血する人は、献血しない人々より長生きするのだ。献血者は献血を始める前から基本的に健康だったということを計算に入れても効果は持続する。さらに興味深いことに、献血をすればするほど延命効果は高まる。確かに、それほど大々的な効果があるわけではなく、永遠に生きられるわけではない。それでも、献血自体、良いことなので、検討する価値はあるだろう。