ソフトバンクが通じないのが悩み

――太平洋に面した温泉もあるんですね。

三井 よくお世話になっています。湯上がりのマスカットサイダーがおいしい(笑)。

――半島突端の温泉でも、携帯電話が余裕で通じるので、びっくりしました。

三井 auですか? いいなあ。ぼくはソフトバンクなんで、広田では通じないところが多いのが悩みなんです。被災地視察に来る人をご案内するときに「以前はこうでした」と、当時の写真をパソコンで見せているんですが、ほんとうは iPad 使いたいんですよ。でもソフトバンク通じないし……。

――そのあたりは、まだ悩ましい問題ということですね。先ほど教えてもらったのは1年通って三井さんが知った広田の美点ですよね。去年の4月、三井さんが初めて広田に来たときの広田の印象は?
Macbookを手に広田を案内してくれる三井さん。「ほんとうはiPad使いたいんですよ」

三井 広田だから、というファーストインプレッションはほとんどないんです。「ああ、『被災地』って、こんな感じなんだ」みたいな。海が近いからこれだけ被害があったんだとか、おじいちゃんおばあちゃんばっかりで大変だなとか、最初はそれくらいしか覚えてないですね。それは、高田の市街地に行っても同じ感覚だったと思います。石巻や南三陸に行っても、たぶん。

4月の段階で、被災地は日本の高齢化や過疎化が50年前倒しになった場所だ、といった話は聞いた気がしてて、「ああ、日本の地方の現状ってこういう感じなんだ」って。見るからにおじいちゃん、おばあちゃんばっかりだし。広田の良さとかは、長く来続けてやっとわかったことで。半島だから、どこに行っても海があるなんてことも、余裕ができてから気づいたことなんで。1カ所にずっと来続けたから、本来の良さに少しずつ気づいていけたのかなと思いますけれどね。