応募数による確率論は成立しない

若手~中堅の採用では、応募があった中で相対的によいと思える人を採用することが多いので、このロジックは一定程度、成り立っています。応募者側が「このあたりの企業の中から、採用してくれるところのどこかに行ければよいや」と考えているなら、お互いに悪いことはありません(個人的にはそのような程度の転職先志向で転職することがよいかについては疑念を持っていますが)。

率直に言って、30〜50代の幹部・中核人材の転職について、採用企業側が相対比較で採用するということはありません。何人、何十人、何百人と会っても、当該ポストを任せられる・任せたいと思える人物でなければ、採用はゼロ。

逆に、たった1人でも、まさにこのポストを任せたい人だとなれば、その人が採用されます。つまり、ミドル・幹部の皆さんには「応募数による確率論」は成立していないということです。

チャンスをみずからつぶしている

さらにここからが特に問題なのですが、上記の前提を踏まえればすぐわかるように、「何となく」目にした求人に次から次へと応募することは、望む転職先の可能性を次から次へとつぶしていっている行為だということです。

履歴書
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まぐれ当たりを期待するかのような闇雲なエントリーで書類が通過することはまずありません。書類が通過したとしても、面接で先に進むことは難しいでしょう。時間の無駄です。

ご縁があったかもしれない応募先に、あいまいな状態で応募してしまったせいで、不採用となってしまった場合、ダメージはその後も続きます。一度、不採用となった企業へは基本的に今後は応募できないからです。

転職動機や志向をはっきりさせ、応募先が求めていることをしっかり理解し、そのために自分が何をできるのかを明確化させて臨んだのに、採用されたかもしれない企業とのご縁が絶えてしまうわけです。

次の新天地であったかもしれない企業との可能性を、自らつぶしてしまうこととなり、もう取り返しがつきません。

目についた求人案件に次から次へと応募することは、貴重な応募先という「持ち駒」を自らどんどんつぶしていっているような自殺行為であることが理解してもらえたかと思います。しっかりと準備と情報収集・確認を行い、ご縁の確率の高い企業にだけ応募する。これを徹底すれば、必ず皆さんの転職活動は好転します。