田舎暮らしで失敗する原因は「地域社会」
越後の家の場合、家が集落の外れにあって、普段目に入る家は道を挟んで向かい側にある1軒だけでしたし、夏場しか住んでいなかったので、私は最後までその地域の一員という扱いは受けませんでしたが、自治会費だけは毎年払っていました(「別荘の人」ということで半額でした)。
幸い、越後の人たちは穏やかで、よそ者に対しても優しく接してくれたので、嫌な思いをすることは一度もありませんでしたが、場所によってはそう簡単ではないでしょう。
農家物件などを購入して移住する場合は、そのへんをしっかり調べた上で、その地区の住民になった後の生き方まで覚悟を決めておく必要があります。
これは無理にその土地の人間になれ、というのではなく、自分のポジションを地域住民に宣言し、それを受け入れてもらった上で、お互いのプラスになるようないい関係を築く努力を惜しむな、ということです。
私はそういうのがかなり苦手なので偉そうなことは言えないのですが、田舎暮らしで失敗する人の多くは、「地域社会に溶けこめなかった」ことが原因になっています。
自然農法で自給自足の生活をしたいと思って農家物件を買って移住した人が数年で断念して引き上げた例を知っていますが、その原因は近所の人たちとの「水争い」でした。
なんとも笑えない話です。
農家の老夫婦の「家も土地もただにする条件」
農家物件は、不動産価値としての相場が定まりにくいという特徴もあります。都会人には信じられないほど安い値段で売りに出されている場合があるかと思えば、こんな不便な場所でこんな強気な価格かよ、と、呆れてしまうこともあります。
後継ぎがいない農家の場合、相続した子供や親族が遠方にいることも多く、とにかくさっさと手放したいという気持ちから、安い値段をつけます。
福島県南地方のある地域に物件探しに行ったとき、立ち寄った農家で老夫婦と話をすることができたのですが、「わしらの話し相手になってくれて、何かあったときに面倒をみてくれるのなら、この家も土地もただでやる」と言われました。子供たちに「面倒だから、この家と土地を相続したくない」と言われたそうです。
安ければ地元の人が買うのではないかと思うかもしれませんが、地元の人にしてみれば、ただでさえ過疎化が進んで自分の家を維持していけるかどうかも分からないのに、新たに家を買うどころではないので、どんなに安くても買いません。