「ブックスマート」だけじゃいけない

知的体力を付けるというのはそういうふうに飛びこんでいくことだと思うんですよ。

中国にも韓国にも行ったことのない人が、ニュースだけとか、ネットだけを見て、中国人は卑怯だとか、韓国人は怒りっぽいとか、いつまで慰安婦を言っているんだとかって言う前に、彼らの奥まで行ったほうが面白いよということです。

これは、前回お話しした記者さんにも言えると思います。

「自分が思い描いていた筋書きと違う」となったときに、そういう体力がないと、ポキッと折れてしまったり、「こんなはずじゃない」と事実の方を歪めてしまったりする事態が起こります。

私のシルクロード旅もそうですが、ほんとに行って、あるがままの声を聴くと、あらかじめ頭にあった筋書きよりも、もっと事情が複雑で入り組んでいるということがある。

自分が思い描いていたものが違ったときに、本来であれば、「そうか、じゃあ、全部1回前提を取り払って、何が起きたのか聞かせてください」というのが正しい取材だったり、コミュニケーションだったりだと思うんです。そこで、「いや、おかしい。私が思ったとおりになんでならないんだろう」と、自分のほうである種のパニックに陥って、認識そのものが歪んでいくということはよくあるんですよね。

これは、陰謀論にハマってしまう人にも言えます。信じているものが違うとなったときに、「全部、嘘だったんだ」とポキッと折れて、陰謀論に向かってしまう。

自分で考える体力があれば、揺れに強くなって、思っていたのと全然違うけど、そこの意外さに面白さがあったよというふうに軌道修正だってできるはずです。

ネットだけ見ているとブックスマートに偏りがちだから、ちゃんとストリートスマートで、体感することも大事だと思います。

作成=神田憲行
モーリーさんの半生
(聞き手・構成=ノンフィクションライター・神田憲行)
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