最高指導部の指示が地方の感染対策に影響か

例えば、リーマンショック後の中国では4兆元(当時の邦貨換算額で57兆円程度)の経済対策が発表された。インフラ投資は積み増され、鉄鋼、銅線、アルミ、板ガラスなどの生産能力も急速に拡大した。その結果、鉄鋼などの在来分野で中国の過剰生産能力は深刻化している。裏返しに、中国の生産者物価指数は下落している。主要先進国のインフレ状況とは対照的だ。

共産党政権はトップから地方幹部までを貫く意思決定、行動様式を確立した。それは一党独裁体制を維持するために重要だ。習近平政権は、党内、さらには民間企業の創業経営者や有名映画俳優に至るまで綱紀粛正を徹底した。

それによって、最高指導部と呼ばれる政治局常務委員の指示は絶対であるという人々の認識は、一段と引き締められただろう。最高指導部の指示に忠実に、全力で取り組むことは、地方政府の幹部の出世に大きく影響する。10月の党大会でナンバー2に躍進した李強氏が上海のロックダウンを徹底したのは、そうした意識からだったと考えられる。

北京の人民大ホール
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「桃がコロナに効く」さまざまなデマも…

習総書記は自らの支配体制の強化(政治)には多くのエネルギーを注いでいる。一方、経済に関しては感染対策を徹底しながら消費などを伸ばすといった考えは劣後しているように見える。それは今後の中国、さらには世界経済にとって大きなマイナスとなるだろう。2022年12月中旬時点で、習政権は米ファイザーなどからワクチンを調達し、高齢者を中心に接種を増やす考えを示していない。

一方、さまざまなデマも流布している。例えば、“桃の缶詰を食べれば、新型コロナの症状が緩和する”と考える人が増えたようだ。感染の後遺症に関する不安を感じる人も多いだろう。中国の製薬メーカーが生産したワクチンの副反応を警戒する人も多い。共産党政権はSNSで閲覧した投稿に“いいね”ボタンを押下することも規制し始めた。