3000本の釘、毎日打ったとして何年で使い切る?
弊社のスタッフの話です。お父さんはDIYが趣味。実家に帰ったら、釘が3000本ぐらい出てきました。これはいい釘だ、というものに出合うとつい買いたくなるようです。
「お父さん、その釘、毎日打ったとして何年で使い切る?」って聞いた瞬間、お父さんはその釘を一気に処分したそうです。
数値化すると、本人にも自覚が芽生えるようですね。
実家に、大量にあるものといえば紙袋。誰かに何かをあげるためにとってあるけれど、いったい何人にあげるの? というぐらいたくさんある。
来客用のティーカップや座布団もそうですね。うちに何人来るの? 法事をうちでやる予定ってないよね?
そんなふうに数字で考えたときに、片づけはスムーズに進みます。
片づけている高齢者は生活の質が違う
「片づけはコミュニケーション」ですから、ぜひ実家の片づけは親と一緒に進めてほしいです。でも片づけようと言うと、親は死を意識して拒否感を示すのはよくあること。あとから、やるから放っておいてと。
そうでなくても親の物が多すぎたり、片づけても親がまた買ってきたり、実家の片づけというのは、往々にして進まないのが現実です。
とはいえ親が元気なうちに、ある程度片づけておかないと困るのは子どものほう。前回もお話ししたように、遺品になると捨てにくくなるからです。
そこで親への説得として効果的なのが、親に人生のステージが変わったことを伝えることです。生前整理で物を捨てることを押しつけるのではなく、暮らしをコンパクトにサイズダウンすることのメリットを伝える。子どもは、その手伝いをするというスタンスを示します。
実際、片づけている高齢者と片づけていない高齢者の生活の質は、明らかに違います。
家が片づいていないと、洗濯物を遠くに干したり、必要な物が見つからず、うろうろしたり、やることがいっぱい。人を呼べる状態ではないので、どんどん孤独になってしまう。「おじいちゃんとおばあちゃんの家は、汚いからイヤ」と孫が行きたがらないという話もよく聞きます。
また、どこにどんな食品を置いたかわからず、それを探すのが面倒くさくて、ちゃんと食べなくなる。生活環境や栄養状態が悪化しているのに、それを改善しようとしない「セルフネグレクト」は、まさに片づけられない人に、あてはまる言葉なのです。
一方、片づけていると、ムダな時間が減って、やりたいことが実現できるし、健康に割く時間も増える。人が集える家になって、地域の交流も増えていきます。良いことずくめなのです。