ほうきが最近、見直されているらしい。「ここ10年くらいでしょうかね。20~40代くらいの女性のお客さまが増えている感じです。掃除機に比べて、うるさくないし、畳表も傷めません。環境にやさしいということもあります。昨年来の節電ブームで、さらにほうきを使う人が多くなっていますね」
こう話すのは、「江戸箒(ほうき)」の老舗・白木屋傳兵衛の高野純一さんだ。白木屋傳兵衛の創業は天保元(1830)年というから、江戸幕府11代将軍・徳川家斉のころだ。180年以上も前から、ほうきを扱っていたことになる。
この店では今でも、職人が一本、一本、手作りで、ほうきを編んでいる。なかには、茨城県・筑波山の麓で採れた国産のホウキグサを使ったものもある。1本が6000~1万2000円もする。ずいぶんと高い気がするが、実はそうでもないらしい。「ほうきというのは、丁寧に使ってやれば、5年から10年もつものです。しかも、最後まで無駄なく使えます」
どういうことなのか。その「丁寧な使い方」を、高野さんに教えてもらった。
当たり前だが、ほうきの掃く部分は草でできている(最近は、ビニール製のものもあるが、やはり使い勝手はいまひとつだ)。この草の部分が片寄らないように、左右均等にバランスよく使うことが基本だ。
右に向かって掃いたら、今度は左に向かって掃く。必要以上に力を入れずに、草が持っているコシの強さを利用する。
高野さんの実演を見ると、草のしなりをうまく利用して、ササッと掃いていく感じだ。「バネ感が強いんで、これで十分だ」と言う。強く掃いても、ほこりを舞い上げるだけなのだろう。